タイトルだけで思わず笑ってしまう小説に出会いました。
『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』は、太宰治の名作『走れメロス』を大胆にパロディ化したミステリー小説です。
「メロスが殺人事件の探偵役?」 「そもそも走っている場合じゃないってどういうこと?」
そんなツッコミどころ満載の設定ですが、実際に読んでみると予想以上に笑えて、ページをめくる手が止まりませんでした。
今回は、本格ミステリーというよりも「笑って楽しめるミステリー」を探している人におすすめしたい本書を、ネタバレなしで紹介します。
■あらすじ
メロスは妹の結婚準備のため、村から10里離れたシクラスの街へ買い物にやって来た。 そしてもう一つ、この街に住む親友・セリヌンティウスに会うことも目的だった。
久しぶりに訪れた街は、以前の活気がなく、不気味なほど静まり返っていた。
近くにいた老爺に話を聞くと、王が次々と人を殺しているという。 人を信じられなくなった王は、自分の敵とみなした者を身内や息子であっても容赦なく処刑しているらしい。
その話を聞いたメロスは激怒した。
「呆れた王よ。生かしておけぬ!」
打倒・王を誓い、王城へ向かうメロス。
しかし、その途中で親友セリヌンティウスに止められ、自宅へ連れ帰られてしまう。
ワインを飲みながら話をしていたはずが、翌朝目を覚ますと、なぜか噴水の前で寝ていた。
そのとき、王城の方から兵士たちの騒ぐ声が聞こえる。
現場へ向かうと、城の門衛が切り殺されていた。
目撃者によれば、犯人は裸で筋骨隆々の男。手には短剣を持ち、頭には布を巻いていたため顔は見えなかったという。 さらに、犯人の尻には大きな傷があった。
その特徴は、メロスと一致していた。
「私が犯人……? 記憶はないが、申し訳ないことをしてしまった。」
こうしてメロスは逮捕される。
独房に入れられたメロスは王の前へ連れて行かれる。
処刑を覚悟したその途中、セリヌンティウスが待っており、一緒に行くという。
玉座には暴君ディオニス王が座っていた。
「人間は私欲の塊だ。貴様も処刑の場で命乞いをするのだろう。」
そう言われたメロスは、
「私は覚悟ができている。命乞いなどせぬ。」
と言い返す。
しかし、故郷の妹を思い出し、王へ願い出る。
「3日だけ待ってほしい。この間に妹の結婚式を挙げ、必ず戻ってくる。」
当然、王は笑う。
「逃した者が戻ってくるものか。」
そこでメロスは驚くべき提案をする。
「もし私が戻らなければ、隣にいる親友セリヌンティウスを処刑してください。」
突然命を預けられたセリヌンティウスは困惑するが、親友の覚悟を受け入れる。
王も面白がり、その条件を認めた。
セリヌンティウスが連行される姿を見て、メロスは約束を誓い、走り出す。
3日以内に村へ戻り、妹の結婚式を終え、再び王城へ帰らなければならない。
しかし、その道中で次々と殺人事件に巻き込まれてしまう。
果たしてメロスは、親友の処刑までに間に合うのだろうか。
■感想
タイトルの通り、本作は太宰治の名作『走れメロス』を大胆にパロディ化した作品です。
そこへ殺人事件を組み合わせ、メロスが探偵役として活躍します。
メロスは正義感が強く、真っ直ぐで体力自慢の青年ですが、本作ではその性格が極限まで誇張されています。
要するに、曲がったことが大嫌いな脳筋です。
そんなメロスが事件を解決していくのですが、その方法はとても推理とは呼べません。
無茶苦茶な発想、強引すぎる解決方法、「なんでそうなるんだ?」と思うような行動の連続で、何度も笑わされました。
『走れメロス』の内容を知っていれば、より楽しめる作品ですが、知らなくてもまったく問題ありません。
むしろ、本書をきっかけに原作へ興味を持つ人もいると思います。
実際、私は『走れメロス』の内容をほとんど知りませんでした。 本書を読んでメロスという人物に興味を持ち、その後、太宰治の『走れメロス』を購入して読んでみました。 すると、本作のメロスは原作のイメージをしっかり残したキャラクターであることがわかりました。
本書は、とにかく笑って読めるミステリーです。
メロスが事件をかき乱し、強引に真実へたどり着き、ときには暴力で犯人をあぶり出すなど、型破りな展開が続きます。 ミステリー小説の中でも、トップクラスに笑える作品ではないかと思いました。
また、読書初心者でも読みやすい工夫が数多くあります。
文章は原作を意識した文学的な雰囲気がありますが、難しい表現は少なく、読みやすい印象です。
さらに登場人物の名前も特徴的です。 妹は「イモートア」、切られて死んだ男は「キラレテシス」、山賊のボスは「ゾクノボス」というように、名前だけで役割がわかるため、「この人誰だっけ?」と混乱することがほとんどありません。 このふざけたネーミングも、本作の大きな魅力です。
3日間という限られた時間の中で次々と事件が起こるため、テンポも非常に良く、飽きる暇がありません。 さらに最後にはちょっとしたどんでん返しも用意されており、最後まで楽しめる構成になっています。
読書初心者には間違いなくおすすめできる一冊です。
ただし、事件や謎解きはシリアスな本格ミステリーというより、笑いを重視した内容です。 本格推理を期待して読むと、物足りなく感じる人もいるかもしれません。
コメディ要素満載のミステリーなので、「普段あまり本を読まない」「活字は苦手」という人でも気軽に楽しめる作品です。 ぜひ一度読んでみてください。
■まとめ
『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』は、太宰治の名作『走れメロス』を大胆にアレンジした、笑い満載のミステリー小説です。
本格的な推理を楽しむ作品というより、「とにかく面白い小説を読みたい」「活字に苦手意識があるけれど読書を始めてみたい」という人にぴったりの一冊でした。
テンポの良い展開、個性的すぎる登場人物、そしてツッコミどころ満載のメロスの行動に、最後まで飽きずに楽しめます。
「ミステリーは難しそう」と感じている人でも、気軽に笑いながら読める作品です。
読書初心者にも自信を持っておすすめできる一冊ですので、気になった方はぜひ手に取ってみてください。

