最後にすべてがつながる切ないミステリー|『アヒルと鴨のコインロッカー』感想(ネタバレなし)

本の紹介

伊坂幸太郎さんの代表的な作品『アヒルと鴨のコインロッカー』。
「おすすめミステリー小説」で検索すると、必ずと言っていいほど名前が挙がる有名作品です。

本屋襲撃という衝撃的な場面から始まる物語。しかし、読み進めていくと、ただのミステリーではなく、登場人物たちの想いやつながりが丁寧に描かれた、どこか切ない青春小説のような作品でもありました。

今回は、そんな『アヒルと鴨のコインロッカー』のあらすじと感想を、ネタバレなしで紹介します。


■あらすじ

僕はモデルガンを握って、閉店間際の書店を見張っていた。引っ越してきた日のことを思い出す。たった2日前のことだ。

大学入学のためアパートに引っ越してきた椎名は、荷物を整理しているときに、隣の部屋に住んでいる細身で長身の河崎と出会う。あやしい雰囲気はあったが、挨拶がてら話をしているうちに部屋へ招かれた。河崎は酒を持ってきて、「乾杯しよう」と言う。僕はまだ未成年だ。

少し話をしていると、「手伝ってほしいことがある」と言われた。このアパートの201号室にアジア系の外国人が住んでいて、その人が辞書を欲しがっているのでプレゼントしたいというのだ。そして、耳を疑うようなことを言ってきた。
「広辞苑を奪う。一緒に本屋を襲わないか。」

一方、2年前。ある夜の出来事。
琴美はブータン人のドルジと一緒に、勤め先のペットショップからいなくなった柴犬を探していた。
すると、横を通過した車から「どん」という音がした。車はそのまま走り去り、その場に残っていたのは猫の死体だった。さっきの音は、猫がひかれた音だったのだ。

2人は猫を埋葬する場所を探し、杉林のある広い児童公園を見つけた。公園は工事中で立入禁止となっていたが、いつまでも猫の死体を持っているわけにもいかないので、この公園に埋葬することに決めた。

猫を埋めたあと、2人は夜の静かな公園のベンチに座って話をしていると、突然、林の奥から大きな笑い声が聞こえ、若者3人が林の中から歩いてきた。
自分たち以外にも公園に人がいたことに驚き、恐怖心から無意識に息を潜める。向こうはこちらに気づいていないようだ。
静かな公園に若者たちの会話が響く。
「野良探すより店から取ったほうが良くない?」
「この前の猫は最高だったな。」
「俺は足切りがいいな。」

最近、この辺りで動物が残酷な方法で殺される事件が頻発しているというニュースがあった。
「テレビ見た?」
「とうとう俺たちも有名人だ。」
間違いない。こいつらが犯人だ。

若者たちに対する怒りを抑え、ただいなくなるのを待っていたが、走ってくる音が聞こえ、ベンチが蹴られた。
「お前ら、ここで何してるんだ?」
気づかれた。男2人、女1人。若者たちは想像通りの外見をしていた。
正面に立った3人は、琴美に聞いてくる。
「林に行った?」
「罠に猫掛かってなかった?」

そして、1人が言った言葉に他の2人はきょとんとする。
「そろそろ人間もありかも。」

現在と過去の話が交互に描かれ、そして2つの物語は徐々に結びついていく。


■感想

冒頭から本屋を襲撃する場面で始まり、どんな展開が待っているのか期待が膨らみました。
日常の中で起きる非日常的な出来事に、どんどん引き込まれていきます。

物語は、本屋襲撃から始まった現在の出来事と、琴美が狙われることになった2年前の出来事が交互に描かれています。
1回ごとの話はそれほど長くなく、小分けに語られているので、途中で区切りよく休めるタイミングがあります。少しずつ読み進めやすく、文章も会話形式が多いため、登場人物の感情が伝わりやすいです。読書初心者の方でも読みやすい作品だと思います。

この物語は、本格ミステリーのような緊迫した恐怖や焦りが続くというより、ゆっくりと物語が進んでいく印象でした。
トラブルに巻き込まれていく登場人物たちの想いや感情が会話を通して伝わってきて、悲しさや嬉しさを一緒に感じることのできる、青春小説のような作品でもありました。

ただ、ミステリー小説ではありますので、最後にはどんでん返しが待っています。
このどんでん返しによって、今まで気づかなかったことや意味が分からなかった部分が一気につながります。
他の小説にあるような、物語が一変するタイプの衝撃的などんでん返しではありません。しかし、今までの内容が走馬灯のように一気に押し寄せ、バラバラだった場面がつながっていく快感がありました。

タイトルは作中とあまり関係ありませんでしたが、、「アヒルと鴨」そして「コインロッカー」の意味がわかったときは、伏線の答えを見つけたような嬉しさがありました。

すべての答えがわかって読み終えたとき、なんとも言えない切なさと、登場人物たちを応援したくなるような感情が湧きました。
振り返ってみると、少し悲しさはありますが、とても素敵なストーリーだったなと思います。

私はまだ多くの小説を読んでいませんが、今まで読んだ小説の中でも特に記憶に残る1冊になりました。
とてもおすすめできる作品です。


■まとめ
『アヒルと鴨のコインロッカー』は、本屋襲撃という不思議な始まりから、現在と過去の出来事が少しずつつながっていくミステリー作品でした。

派手な展開が続くタイプではありませんが、登場人物たちの会話や感情が丁寧に描かれていて、気づけば物語の世界に引き込まれていきます。
そして最後には、それまでの出来事の意味がつながり、切なさと温かさが残る読後感を味わうことができました。

文章も読みやすく、会話中心でテンポ良く進むため、読書初心者の方にもおすすめしやすい作品だと思います。

「読みやすいミステリーを探している」「切ない読後感のある作品を読みたい」という方は、ぜひ一度読んでみてください。​

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