最後にすべてがつながる切ないミステリー|『アヒルと鴨のコインロッカー』感想(ネタバレなし)

本の紹介

伊坂幸太郎さんの代表的な作品『アヒルと鴨のコインロッカー』。
「おすすめミステリー小説」で検索すると、必ずと言っていいほど名前が挙がる有名作品です。

本屋襲撃という衝撃的な場面から始まる物語。しかし、読み進めていくと、ただのミステリーではなく、登場人物たちの想いやつながりが丁寧に描かれた、どこか切ない青春小説のような作品でもありました。

今回は、そんな『アヒルと鴨のコインロッカー』のあらすじと感想を、ネタバレなしで紹介します。


■あらすじ

大学入学のため、アパートに引っ越してきたばかりの椎名。
荷物を整理していると、隣の部屋に住む河崎と出会います。

どこか怪しい雰囲気を感じながらも、話をしているうちに河崎の部屋へ招かれます。
未成年の椎名に酒を勧める河崎は、「手伝ってほしいことがある」と言ってきます。
そのあと河崎が口にしたのは、椎名が耳を疑うような言葉でした。

「一緒に本屋を襲わないか。」

一方、2年前。
ペットショップで働く琴美は、ブータン人の青年・ドルジと一緒に、車に轢かれてしまった猫を埋葬するため、杉林のある児童公園へ向かいます。

二人は杉林の中に猫を埋め、公園のベンチに座って話していると、林の奥から三人の若者が現れました。
大声で話す若者たちの会話から、動物虐待事件に関わっていることをうかがわせる言葉が聞こえてきます。

最近、この辺りでは動物が残酷な方法で殺される事件が相次いでいました。


直感的にこの若者たちが犯人ではと思い、琴美とドルジは彼らに気づかれないよう息をひそめますが、若者たちに見つかってしまいます。
そして、若者の一人が口にした言葉に琴美は身の危険を感じ、恐怖が襲ってきます。

現在の椎名と河崎、そして2年前の琴美とドルジ。
一見すると関係のなさそうな2つの物語が交互に描かれながら、少しずつつながり始めます。

いったい、書店を襲う計画にはどんな目的があるのか。
そして、2年前に起きた出来事は、現在の物語とどのようにつながっていくのか。


■感想

冒頭から本屋を襲撃する場面で始まり、どんな展開が待っているのか期待が膨らみました。
日常の中で起きる非日常的な出来事に、どんどん引き込まれていきます。

物語は、本屋襲撃から始まった現在の出来事と、琴美が狙われることになった2年前の出来事が交互に描かれています。
1回ごとの話はそれほど長くなく、小分けに語られているので、途中で区切りよく休めるタイミングがあります。少しずつ読み進めやすく、文章も会話形式が多いため、登場人物の感情が伝わりやすいです。読書初心者の方でも読みやすい作品だと思います。

この物語は、本格ミステリーのような緊迫した恐怖や焦りが続くというより、ゆっくりと物語が進んでいく印象でした。
トラブルに巻き込まれていく登場人物たちの想いや感情が会話を通して伝わってきて、悲しさや嬉しさを一緒に感じることのできる、青春小説のような作品でもありました。

ただ、ミステリー小説ではありますので、最後にはどんでん返しが待っています。
このどんでん返しによって、今まで気づかなかったことや意味が分からなかった部分が一気につながります。
他の小説にあるような、物語が一変するタイプの衝撃的などんでん返しではありません。しかし、今までの内容が走馬灯のように一気に押し寄せ、バラバラだった場面がつながっていく快感がありました。

タイトルは作中とあまり関係ありませんでしたが、、「アヒルと鴨」そして「コインロッカー」の意味がわかったときは、伏線の答えを見つけたような嬉しさがありました。

すべての答えがわかって読み終えたとき、なんとも言えない切なさと、登場人物たちを応援したくなるような感情が湧きました。
振り返ってみると、少し悲しさはありますが、とても素敵なストーリーだったなと思います。

私はまだ多くの小説を読んでいませんが、今まで読んだ小説の中でも特に記憶に残る1冊になりました。
とてもおすすめできる作品です。


■まとめ
『アヒルと鴨のコインロッカー』は、本屋襲撃という不思議な始まりから、現在と過去の出来事が少しずつつながっていくミステリー作品でした。

派手な展開が続くタイプではありませんが、登場人物たちの会話や感情が丁寧に描かれていて、気づけば物語の世界に引き込まれていきます。
そして最後には、それまでの出来事の意味がつながり、切なさと温かさが残る読後感を味わうことができました。

文章も読みやすく、会話中心でテンポ良く進むため、読書初心者の方にもおすすめしやすい作品だと思います。

「読みやすいミステリーを探している」「切ない読後感のある作品を読みたい」という方は、ぜひ一度読んでみてください。​


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