ミイラが復活し、自らの死の真相を追う。
そんなあらすじを見たとき、「いったいどんな話なんだろう?」と思わず興味を持ってしまいました。
『ファラオの密室』は古代エジプトを舞台にしたミステリー小説です。
ミイラや神々が登場するファンタジー色の強い作品ですが、物語の中心にはしっかりとした謎解きがあり、最後には驚きの真相も待っています。
今回は、古代エジプトの独特な世界観と本格ミステリーを楽しめる『ファラオの密室』の感想を、ネタバレなしで紹介します。
■あらすじ
古代エジプト。
最高峰のミイラ職人タレクは、葬送の儀を控えたアクエンアテン王の遺体をミイラにするという、名誉ある仕事を任されていた。
そして7日後、いよいよ王を冥界へ送り出す葬送の儀が始まる。
神官たちが儀式を進め、王が眠る石棺の蓋を開けたその瞬間――異変が起こった。
石棺の中から、アクエンアテン王の遺体が消えていた。
一方その頃、上級神官のセティは奇妙な場所で目を覚ます。
そこは冥界へ向かう死者の船だった。自分が死んだことを悟ったセティだったが、なぜ死んだのか、その理由だけが思い出せない。
やがてセティは冥界で「死者の審判」を受けることになる。
しかし、そこで思いもよらない事実が判明する。
セティの心臓が欠けていて、死者の審判を受けることができないのだ。
そこでセティは、わずかに残った生命力を頼りに現世へ戻り、3日間という限られた時間の中で、自分の心臓の欠片と死の真相を探すことになる。
ところが現世では、アクエンアテン王の葬送の儀が失敗し、王の遺体が消えたことで大騒ぎになっていた。
なぜ王の遺体は石棺から消えたのか? そして、セティはいったいなぜ死んだのか?
古代エジプトを舞台に、現世と冥界、二つの謎が交錯するミステリーが始まる。
■感想
舞台は古代エジプト。
ピラミッドやスフィンクス、ミイラやツタンカーメンなど、数多くの謎が残され、今なお研究が続けられている時代です。
私はこうした古代エジプトの世界観が好きなので、この作品にも強く惹かれました。
ミイラとなった死者がよみがえり、事件を解明していくという非常に不思議なストーリーですが、古代エジプトという舞台だからこそ違和感なく受け入れられたと思います。
本書は当時の文化や信仰、神話が物語の土台になっています。
そのため読んでいると、異文化の世界を旅しているような感覚になります。
しかし歴史書や専門書のような難しさはなく、言葉や表現も分かりやすいため、とても読みやすい作品です。
読書初心者の方でも十分に楽しめると思います。
ストーリーはファンタジー要素が強めです。
そもそも死者がよみがえる時点で現実離れしていますし、神話の神々も登場します。
古代エジプトという舞台そのものがどこか幻想的な雰囲気を持っているため、物語の中では不思議な出来事が次々と起こります。
現代を舞台にしたミステリーのような身近さはありませんが、その分、非日常的な世界観に引き込まれる魅力があります。
ストーリーを理解するうえで必須ではありませんが、少しでも神々の名前や特徴を知っていると、より親しみやすく感じられると思います。
エジプト神話に興味がある方は、事前に少し調べてみるのもおすすめです。
本書はファンタジー要素がありながらも、ミステリーとしてもしっかり作られています。
主人公セティは事件を解明するために聞き込みを重ね、少しずつ真相へ近づいていきます。
そして最後には大きな驚きが待っています。
ただし、そのどんでん返しは事件そのもののトリックというより、物語全体に関わる真相に近いものです。
真相が明らかになったときは非常に切なく、少し胸が熱くなるような感動もありました。
読む際の注意点としては、人や神の名前が少し覚えにくいことです。
アクエンアテンやホルエムヘブなど、馴染みのない名前が数多く登場します。
海外ミステリーでよくあるように、誰が誰だか分からなくなることもあるかもしれません。
冒頭には主要人物の紹介がありますので、必要に応じて見返しながら読むと理解しやすいと思います。
■まとめ
ミイラとしてよみがえった主人公が、自らの死の真相と消えたファラオの謎を追う異色のミステリーです。
古代エジプトの神話や文化が自然に物語へ溶け込んでおり、他のミステリーでは味わえない独特の世界観を楽しめます。
ファンタジー要素は強めですが、謎解きもしっかりしており、最後には切なく印象的な真相が待っています。
古代エジプトや神話が好きな方はもちろん、読書初心者の方にもおすすめできる一冊です。
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