この作品はタイトルと表紙を見てわかる通り、『不思議の国のアリス』を題材に描かれています。
『不思議の国のアリス』を知っている人であれば、興味がわくのではないでしょうか。
登場するキャラクターもアリスに出てくる人物や動物たちなので、イメージしやすく親しみやすさがあります。
『不思議の国のアリス』を知らない人でも問題ありません。ストーリーはオリジナルなので、ミステリー小説として楽しめます。
逆に、本書がキッカケで原作に興味を持つかもしれません。
■あらすじ
大学生の栗栖川亜理(くりすがわ あり)は、最近、不思議な夢を繰り返し見るようになった。
夢の中で亜理は、「アリス」という少女になって不思議の国を訪れている。この世界では動物たちが言葉を話しているのだが、どうも会話が噛み合わない。
登場人物たちは、それぞれ真剣に話している。しかし、どう考えても話が成立していない。そんな不思議な世界で、ハンプティ・ダンプティの殺人事件が発生したのだ。
アリスは殺人現場にいた帽子屋に「ハンプティ・ダンプティが殺されたの?」と聞いたのに、「誰が殺されたの?」と聞き返される。
しかも、「アリスが殺人を知っていた」ということで、アリス自身が犯人ではないかと疑われてしまう。
言葉がかみ合わないこの世界で捕まれば死刑になってしまう。
ここで夢から目覚めた亜理は、夢の内容を日記に書き留めることにした。
「ハンプティ・ダンプティは殺された」
ところが、現実世界でも思いもよらない事件が起こる。
大学の研究室の王子玉男(おうじ たまお)が、屋上から転落して死亡したのだ。
その事件をきっかけに、亜理は夢の中で起きた出来事と現実世界の事件が、奇妙に繋がっていることに気付く。
夢の中でアリスが死ねば、現実世界の亜理も死んでしまう。
アリスの無実を証明し、自分自身の命を守るため、亜理は夢と現実、二つの世界で起こる事件の謎に挑むことになる。
■感想
とんでもない本に出会ってしまいました。
私は『不思議の国のアリス』について、内容はほとんど知らず、登場人物としてアリス、ハートの女王、トランプの兵隊が出てくるくらいしかわかっていませんでした。
ただ、子どもと一緒にディズニーアニメを見たりしていたので、ディズニー関連の作品には興味がありました。
それで、評価が高かった本書を知り読んでみたのですが、とにかく混乱しました。
この物語はほとんど会話形式で進むのですが、あらすじを読んでいただけるとわかるように、会話が成り立っていません。
今まで読んだ小説では、会話形式が多いほうが感情や状況がわかりやすく、読みやすい印象がありました。しかし、この本ではそれが通用しません。
1回の会話の中で話が二転三転し、言っている意味がわからない、なぜそうなるのかわからないまま話が進んでいきます。
不思議の国での会話を真面目に受け止めながら読んでいると、ものすごくストレスが溜まります。
寛大な心を持って、受け流しながら読むことをオススメします。
ただ、これこそが本書の魅力であり、『不思議の国のアリス』の世界観を取り入れた、他の作品にはない個性的な1冊になっているのだと思います。
ストーリー自体はしっかりミステリー仕立てになっていて、終盤にはどんでん返しが待っています。
どんでん返しのあとに話を振り返ると、「確かにそうだったかも」と思えますが、初見でトリックに気付ける人はかなり少ないと思います。
この物語はどんでん返しのあとに来る結末のほうが印象的です。
グロいです。
作中にはグロテスクな表現が何度かありますが、最後の場面はかなり痛々しく、目を背けたくなるような描かれ方をしています。
グロ系が苦手な方は注意してください。
本書は、内容が理解しにくく、会話にストレスを感じること、グロい描写があること、異質なミステリーであることから、途中で読むのをやめてしまうかもしれません。
頑張って読み切ることを目標にできれば良いのですが、読書初心者の方には難しい作品だと思います。正直、初心者の方にはオススメできません。
しかし、『不思議の国のアリス』という入りやすい題材であり、ファンタジーを含んだストーリー自体は現実離れしていてとても面白いです。
奇抜な作品を探している方、グロい内容が好き、もしくは平気な方、どんな内容でも広い心で受け止められる方には、ぜひ読んでもらいたい作品です。
■まとめ
『アリス殺し』は、読書初心者にはかなり難しい作品だと思います。
会話のクセが強く、「何を言っているのかわからない」と感じる場面も多いため、合わない人は途中で挫折してしまうかもしれません。
ただ、その独特な世界観や、終盤のどんでん返しには強い魅力があります。
「普通のミステリーでは物足りない」「変わった作品を読んでみたい」という方には、印象に残る1冊になると思います。
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