世界一売れたミステリー小説、そして誰もいなくなった。
1939年の発売から、今なお世界中で読み継がれています。
ミステリー小説に興味がない人でも、タイトルを聞いたことがあるのではないでしょうか。
古典ミステリーの最高峰に君臨し、時代を超えた現在でも十分に楽しめるストーリーは、多くのミステリー作品の基盤になっています。
読書初心者の方には、まずこの『そして誰もいなくなった』を読んでから、他のミステリー小説に触れていくことをオススメします。
■あらすじ
とある孤島に、男女8人が招待された。
この孤島は、かつて大富豪が購入し、豪華な邸宅を建てたことで知られている。
招待状を送ったのは、最近この島を購入したというオーウェンという人物だった。
招待された人々は、年齢も職業もバラバラで、お互い面識がない。
さらに、招待主であるオーウェンという人物にも誰一人心当たりがなかった。
用意されていた船に乗り島へ到着すると、オーウェンの使用人だというロジャース夫妻が出迎えてくれた。
オーウェンがどこにいるのかを訪ねると、到着が遅れており、明日にならないと来られないという。
招待者のオーウェンが不在であったが、ロジャース夫妻は8人を豪華な邸宅へ案内した。
邸宅の中は近代的な内装で、白い絨毯や豪華な鏡、大理石でできたクマの置物などが飾られていた。
まさに大富豪の邸宅にふさわしい、豪華な空間だった。
そして暖炉の上には額縁が飾られており、そこには誰もが知る子守唄の歌詞が書かれていた。
「10人が食事に出かけ、1人がノドを詰まらせ9人になった。
9人が遅くまで起きていて、1人が寝過ごし8人になった。
8人が〜〜。
〜1人が残され、彼が首をくくり、誰もいなくなった。」
大広間に集まると、ロジャース夫妻のもてなしによって晩餐会が始まり、見知らぬ者同士だった8人も徐々に打ち解けていく。
豪華な食事と会話を楽しみ、誰もが満足した時間を過ごしていた。
そんな中、一人の男が大広間を見回し、あるものに気付く。
ガラス台の上に置かれた10体の人形。
誰もが、額に飾られていた子守唄になぞらえたものだと思った。
食後の酒や会話を楽しみ、くつろいでいた時――突然、蓄音機が動き出す。
流れてきたのは音楽ではなく、人の声だった。
突然の出来事に全員が驚きながら耳を傾けると、その場は凍りつく。
「〇〇氏、あなたは19xx年に人を殺害している。」
「✕✕氏、あなたは〜〜氏を死に追いやった。」
それは、その場にいた者たちを告発するメッセージだった。
しかも、ロジャース夫妻を含む島にいる10人全員の過去の罪を読み上げていたのである。
ここにいる全員が、過去に人を殺している――。
いったい誰がこんなことをしたのか。
何のために?
疑いは、招待状の送り主であるオーウェンへ向けられる。
しかし、誰もオーウェンに会ったことがない。
使用人のロジャース夫妻ですら、やり取りは手紙のみで、実際に会ったことはないという。
オーウェンという謎の人物に恐怖を感じ、一刻も早く島を離れようとする一同。
しかし、一人の青年が反対する。
「みんな意気地がなさすぎる。島を離れる前に、この謎を解いていこう。」
そう言うと、青年はグラスを手に取り、一気に飲み干した。
直後、青年はノドを詰まらせたように苦しみ始める。
顔色が変わり、やがて椅子から滑り落ち、そのまま動かなくなった。
ガラス台の人形が、1体減っていた。
■感想
さすが、世界一売れたミステリー小説です。
孤島という逃げ場のない空間。
そこに閉じ込められた人々と、姿の見えない謎の犯人。
次々と事件が起きていき、「次は自分かもしれない」という緊張感があります。
ストーリーが進むにつれて犯人が絞られていくはずなのに、終盤まで正体が分からず、疑問と焦りがどんどん増していきました。
物語は10人それぞれの視点を交えながら進んでいきます。
各人物の感情や考え方が分かりやすく描かれており、会話も多いため、読書初心者でも比較的スラスラ読み進めることができました。
1939年、日本で言えば昭和14年。
太平洋戦争が始まる以前に書かれた作品です。
古典ミステリーと呼ばれる作品ですが、内容は決して古臭くありません。
展開やトリックも「なるほど、そういうことか」と納得でき、今読んでも何十年も前の作品とは思えないほど楽しめました。
多くのミステリー作品の原点となっている本書は、これからミステリーを読んでいこうと思っている人に、まず読んでもらいたい作品です。
現代ミステリーのような衝撃的などんでん返しがあるわけではありませんが、多くの作品で本書の名前やトリックがモチーフとして使われています。
そのため、本書を知ったうえで他のミステリーを読むと、より深く楽しめると思います。
一方で、ある程度ミステリーを読んでいる人にとっては、王道的な内容で、トリックも見慣れたものに感じるかもしれません。
刺激の強い現代ミステリーと比べると、確かに少し物足りなさはあります。
ただ、ミステリー好きとして、この作品を読まないのはもったいないです。
むしろ、ミステリー経験が少ない初心者のうちに読んでおいたほうが、本作の魅力をより強く感じられると思います。
読む時の注意点としては、登場人物の名前や特徴を意識しながら読み進めることです。
海外作品あるあるかもしれませんが、名前が覚えにくく、「誰がどんな人物だったか」が分からなくなることがあります。
そのまま読み進めると、重要な場面で混乱してしまうかもしれません。
これは私自身の失敗談でもあります。
登場人物をしっかり把握しないまま読み進めてしまい、最後のネタばらしの場面で「誰?どの人?」となってしまいました。
読み返してから「なるほど」と理解できましたが、できれば初見のまま最後の衝撃を味わいたかったです。
■まとめ
『そして誰もいなくなった』は、世界を代表するミステリー小説です。
数多くの作品が参考にしてきた“原点”とも言える内容が、この一冊に詰まっています。
会話形式が多く、比較的読みやすいため、読書初心者にもオススメできる作品です。
今後さまざまなミステリー小説に出会っていくことを考えると、むしろ初心者だからこそ早めに読んでおくべき一冊だと思います。

