ミステリー小説にはさまざまな作品がありますが、『屍人荘の殺人』はその中でもかなり異色の作品です。
大学生たちがペンションで合宿を行うという、いかにも事件が起こりそうな舞台設定。そこに脅迫状や過去の自殺事件といった不穏な要素が加わり、物語は思いもよらない方向へ進んでいきます。
私も以前から気になっていた作品だったのですが、実際に読んでみると想像していた本格ミステリーとは少し違い、良い意味で予想を裏切られました。
本作は漫画化や映画化もされ、多くのミステリーファンから高い評価を受けている話題作です。
今回は、そんな『屍人荘の殺人』を読んだ感想をネタバレなしで紹介します。
■あらすじ
ミステリ愛好会に所属する葉村譲は、会長の明智恭介と喫茶店で推理談義を楽しんでいた。
そんな二人の前に現れたのが、文学部の剣崎比留子だった。
彼女から持ちかけられたのは、映画研究部の合宿への同行依頼。
実は、その合宿には「今年の生贄は誰だ」という脅迫状が届いていた。しかも過去には、合宿中に自殺者が出たこともあるという。
事件の真相を探るため、葉村たちは映画研究部のメンバーとともに、山奥のペンションへ向かうことになる。
ところが、そこで待っていたのは、思っていたようなミステリー合宿ではなかった。
どうやら今回の合宿は、映画研究部のOBたちをもてなすためのコンパだったのだ。
「事件が起こりそうな場所で推理ができる」と期待していた明智は少し拍子抜け。しかし、そんな空気も夕方から始まった肝試しによって変わっていく。
男女でペアを組み、山の中にある神社を目指して歩き始めた葉村と剣崎。
暗い山道を進んでいると、突然、遠くからただならぬ悲鳴が聞こえてくる。
さらに、山の反対側に目を向けた二人は、信じられない光景を目にする。
それは、これから始まる惨劇の幕開けだった。
なぜ、この場所で異常事態が起こったのか? そして、脅迫状を送りつけた人物の目的とは?
閉ざされたペンションを舞台に、想像を超える殺人事件が始まる。
■感想
漫画や映画にもなっている『屍人荘の殺人』は、おすすめのミステリー小説として名前が挙がることも多く、聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
本作は大学生の合宿という身近な舞台から、ある出来事をきっかけに一気に異常事態へと変化していきます。
物語は葉村譲の視点で進みますが、実際に謎を解き明かしていくのは明智恭介です。
行き過ぎたミステリーオタクともいえる明智が、独創的な推理で事件の真相に迫っていく姿には自然と引き込まれました。
作中には難しい表現も少なく、大学生たちの軽快な会話を中心に物語が進みます。
そのため内容を理解しやすく、登場人物の感情も伝わりやすい印象でした。
特に明智恭介というキャラクターは魅力的で、読書初心者の方でも楽しく読み進められると思います。
一方で、少し気になった点もありました。
作中では大きく分けて二つの事件が起こるのですが、そのうち一方のインパクトが非常に強いため、もう一方の印象が薄くなってしまったように感じます。
そして、その印象の薄くなってしまった事件こそが本作のミステリーとしての中心部分でした。
読み終えた時には「すべて解決したのだろうか」と少し戸惑いが残り、個人的にはやや消化不良な印象もありました。
もちろん、このあたりはネタバレになってしまうため詳しくは書けません。
ただ、大学生たちの身の周りで起きる事件の方に注目して読むと、本格ミステリーとして十分楽しめる作品だと思います。
トリックは本格ミステリーらしく作り込まれており、それを探偵役の明智恭介が一つひとつ解き明かしていきます。
これからミステリー小説を読んでみたい方には、入門作品としておすすめできる一冊です。
反対に、本格ミステリーを数多く読んでいる方にとっては、やや物足りなく感じる部分もあるかもしれません。
■まとめ
個人的には気になる部分もありましたが、それでも「なぜこの作品が多くの人におすすめされているのか」はよく分かりました。
物語の展開は非常にインパクトがあり、続きが気になってページをめくる手が止まりません。
ミステリー初心者の方はもちろん、普段あまり本を読まない方でも楽しみやすい作品だと思います。
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