「お嬢様の目は節穴でございますか」
このセリフを聞いたことのある人もいるのではないでしょうか?
大富豪のお嬢様と、その屋敷に仕える執事。
圧倒的にお嬢様のほうが権力が上で、執事はいつでも首を切られる立場なのに、なぜかお嬢様に対し、とても失礼な発言をする。
ただ、その言葉には執事なりの信念があるのでしょう。
コントのような2人の掛け合いが最高な『謎解きはディナーのあとで』。
笑えるミステリー小説を楽しんでみてください。
■あらすじ
世界に名を轟かせる宝生グループ。その総帥の一人娘・宝生麗子は、誰もがうらやむお嬢様でありながら、身分を隠して刑事として働いている。
ある日、麗子は一人の女性が殺害された事件を担当することになる。
被害者は自宅でロープによって殺害されており、周囲からいくつかの目撃情報も集まっていた。しかし、捜査を進めても犯人や犯行の手がかりは見えてこない。
すっかり頭を悩ませた麗子は、仕事を終えて自宅へ戻る。
そこで事件の話を聞いてくれたのが、麗子の執事・影山だった。
麗子が事件の詳細を話すと、影山はしばらく考え込む。
「どう? 何か思いつくことがある?」
麗子が尋ねると、影山はお嬢様の期待に応えるように、事件の真相を語り始める。
ところが、その前に一言。
「失礼ながらお嬢様――この程度の真相がおわかりにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」
「クビよ、クビ!」
事件を解けずに悩む麗子と、そんな麗子を容赦なく扱う毒舌執事・影山。
しかし、影山が語る推理は、麗子も納得するほど見事なものだった。
果たして、影山はいったいどのように事件の真相を見抜いたのか?
ディナーのあとの優雅な時間に繰り広げられる、お嬢様と毒舌執事のコミカルな推理劇が始まる。
■感想
刑事であるお嬢様と毒舌執事のやり取りに最後まで楽しく読むことができました。
影山は、どんな要望にも先回りして応える、漫画のような理想の執事。
そして鋭い洞察力と推理力で事件を聞いただけで真相までわかってしまう、まさに天才です。
そして、麗子に対して丁寧な言葉でキレのある毒を吐く、正しさの中に「それ言って大丈夫?」と読者を不安にさせるところも大きな魅力です。
一方、麗子は大富豪の御令嬢ですが、よくあるわがまま三昧で人を下に見る傍若無人なお姫様ではなく、身分を隠して刑事の仕事をする、庶民的な感覚も持ち合わせた女性です。
ただ、執事の影山の前ではお嬢様っぷりが出てしまい、従順な執事をいいように使おうとしますが、それも影山に簡単にあしらわれてしまう、どこか隙のある放っておけない女性です。
この影山と麗子の掛け合いがとても面白く、本書最大の魅力に感じました。
御令嬢という立場が上の人物がボケて、執事という絶対服従の人がツッコむところに面白さが生まれ、お笑いコンビを観ているかのような楽しさが生まれます。
ここまで2人の面白さを書きましたが、本書は人間性を書いたお笑い小説ではなく、しっかりしたミステリー小説です。
難解な事件に対し、現場検証や聞き込みなど足で稼ぐ麗子と、麗子が集めた状況証拠から事件の真相を導き出す影山。
この2人が連携することで謎解きが進み、事件解決につながっていきます。
ストーリーは6つの話に分かれていて、どの話も短く1話完結となっています。
状況説明もわかりやすく描かれていて会話部分も多く、読みやすさもあります。
短い話でありながら本格ミステリーさながらの推理やトリックがありますので、ミステリーが初めての読書初心者の方に非常に向いています。
ミステリーを数多く読んでいる人にとっては、短編集であるぶん物足りなさを感じてしまうかもしれませんが、ミステリー初心者はもちろん、ミステリーファンで笑いと謎解きの両方を楽しみたい方にはおすすめできる1冊です。
■まとめ
ミステリーと聞くと、「難しそう」「頭を使いそう」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、『謎解きはディナーのあとで』は、影山と麗子の軽快な掛け合いのおかげで、最後まで楽しく読み進めることができます。
笑える会話と本格的な謎解きの両方を味わえる一冊なので、ミステリー初心者はもちろん、気軽に読める作品を探している方にもおすすめです。
ぜひ、影山の毒舌と鮮やかな推理を楽しんでみてください。
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