「この家なにか変⋯」間取り図から始まるミステリー|『変な家』感想(ネタバレなし)

本の紹介

「ちょっと変わったミステリーを読んでみたい」
「普通の推理小説とは違う作品を読んでみたい」

そんな人におすすめしたいのが、雨穴さんの『変な家』です。

この作品は、家の間取り図を手がかりに、その家に隠された謎を解き明かしていくミステリーです。

小説なのに、物語の途中にはたくさんの間取り図が登場します。
間取り図を眺めながら、
「この部屋は何のためにあるんだろう?」
「どうしてここに扉があるんだろう?」
「この家は、いったい何に使われていたんだろう?」
と、登場人物たちと一緒に推理することができます。

今回は、そんな雨穴さんの『変な家』を読んだ感想を紹介します。


あらすじ

ある日、筆者のもとに知人から一枚の間取り図が送られてきます。
知人は近々、家の購入を考えており、売りに出されている一戸建てを気に入ったそうです。

しかし、その家の間取りには、どうしても気になるところがあるといいます。

間取り図を見ると、家の中に四方を壁に囲まれた謎のスペースがありました。
さらに、部屋の配置をよく見ていくと、ほかにもいくつかの不自然な部分があります。

オカルトには詳しい筆者ですが、建築については素人。
そこで、ミステリー好きの建築士にこの間取り図を見てもらうことにします。
すると建築士から、思いもよらない指摘が。

どうやら、この間取りは偶然こうなったのではなく、何らかの意図を持って作られた可能性があるというのです。

なぜ、こんなところに謎のスペースがあるのか。
なぜ、窓のない部屋があるのか。
なぜ、二重になった扉があるのか。

一見すると普通の一戸建てに見える家に、次々と不可解な部分が見つかっていきます。

筆者と建築士は、間取り図を手がかりに、この家がどのように使われていたのかを推理していきます。

「この部屋は何に使われていたのか?」
「ここからここへ移動すると、どんな動線になるのか?」
「そもそも、なぜこんな家を建てたのか?」

間取り図に隠された謎を追っていくうちに、この家にまつわる恐ろしい背景が少しずつ見えてきます。

果たして、この家は何のために作られたのでしょうか?


■感想

間取り図がミステリーになるという面白さ

『変な家』を読んでまず面白いと感じたのが、「間取り図」をミステリーの題材にしているところです。

引っ越しや家探しなどで、間取り図を見たことがある人は多いのではないでしょうか。

「この部屋はこれくらいの広さがいい」
「キッチンはここにあったほうが便利そう」
「トイレはこの位置がいいな」

など、間取り図を見ながら、実際にそこで生活することを想像した経験がある人もいると思います。

そんな身近な間取り図が、この作品ではに満ちた恐怖の入り口になっています。

例えば、家の中に自分が知らない空間があったと気づいた時、どう思うでしょうか?
普段生活している家なのに、誰も知らない部屋や、用途の分からないスペースが存在していたら……。
「ここは何のためにあるんだ?」
と気になってしまうと思います。

この作品では、そんな「間取り図を見たときに感じる小さな違和感」を一つずつ拾い上げていきます。

間取り図を見ながら、一緒に推理できる

『変な家』の大きな特徴が、物語の中に間取り図が何度も登場することです。
文章だけで謎を説明するのではなく、実際の間取り図を見ながら話が進んでいきます。

そのため、
「確かに、この配置はおかしいな」
「この部屋は何に使うんだろう?」
「この扉には意味があるのでは?」
と、自分でも間取り図を確認しながら考えることができます。

登場人物の推理をただ聞いているだけではなく、読者も間取り図を見ながら一緒に推理しているような感覚を楽しめるのです。

しかも、作品の表紙にも題材となる間取り図が大きく描かれています。
本を手に取った時点から、
「この家、何か変じゃない?」
と考えさせられるところも面白いところです。

前半と後半で、物語の面白さが変わっていく

物語は大きく分けると、前半と後半で楽しみ方が変わります。

前半では、主に間取り図に隠された不自然な部分を探っていきます。
謎のスペースや窓のない部屋、扉の配置などを手がかりに、
「この家は、どのように使われていたのだろう?」
と推理していきます。

そして後半になると、少しずつ視点が変わっていきます。

今度は、
「なぜ、このような家が建てられたのか?」
という部分が明らかになっていきます。

前半で見つけた一つ一つの違和感が、後半につながっていく構成になっているため、読み進めるほど家の謎が大きくなっていきます。

・真相が予想を越えてくる

筆者と建築士が間取り図を見ながら、
「このスペースは、こういう目的なのでは?」
「この部屋は、こう使われていたのでは?」
と、さまざまな可能性を推測していくのですが、あくまで最初は二人の憶測です。

二人の推理に納得してしまう部分があったり、読者によっては、
「本当にそんな使い方をするのかな?」
「ちょっと考えすぎなのでは?」
と思う場面もあるかもしれません。

ただ、物語が後半に進むにつれて、少しずつこの家の背景が明らかになっていきます。
そして、最初に想像していたものよりも、さらに深く恐ろしい事情が見えてきます。

序盤の「何か変だな」という感覚が、後半に進むにつれて「やっぱりこの家はおかしい」という感覚に変わっていくところが、この作品の怖さだと思います。

ホラーのような不穏な雰囲気も魅力
『変な家』は、一般的な本格ミステリーとは少し違った雰囲気があります。

物語の序盤から、どこか不穏な空気が漂っています。
「この家は、もしかしたら犯罪に使われていたのでは?」
という考えを軸に推理が進んでいくため、ミステリーでありながら、ホラーやオカルト作品のような怖さも感じられます。

「何かがおかしい」と分かっているのに、その正体が分からない。
そして、調べれば調べるほど、さらに不気味な事実が出てくる。

このじわじわと迫ってくるような不穏さが、『変な家』の魅力の一つです。

とにかく読みやすいミステリー

もう一つ、この作品を読んで感じたのが、非常に読みやすいことです。

本のボリュームはそれほど多くなく、会話形式で物語が進む場面も多くなっています。
さらに、文章だけでなく間取り図が随所に挿入されているため、文字をひたすら追い続けるような感覚がありません。

そのため、普段あまり小説を読まない人でも、比較的読みやすい作品だと思います。

「ミステリーを読んでみたいけれど、長い小説はちょっと……」
という人にも向いているのではないでしょうか。


まとめ

雨穴さんの『変な家』は、「家の間取り図」を謎解きの題材にした、少し変わったミステリーです。

身近な間取り図を見ながら、
「この部屋は何のため?」
「なぜ、こんな場所に扉が?」
「この家は、どのように使われていた?」
と考えていくため、一般的な推理小説とは違った楽しみ方ができます。

前半では間取り図に隠された違和感を探り、後半ではその家が建てられた理由や、実際にどのように使われていたのかが明らかになっていきます。

また、間取り図が何度も登場するので、読者自身も図を見ながら登場人物と一緒に推理できるのも、この作品ならではの面白さです。

そして、物語が進むにつれて、家に隠された背景が徐々に明らかになっていきます。

最初は「ちょっと変な間取り」だったものが、読み進めるうちに「この家、怖すぎる……」へと変わっていく。
そんな不気味さを楽しめる作品でした。

「普通のミステリーとは少し違う作品を読んでみたい」
「間取り図や家の構造を見るのが好き」
「短めで読みやすく、怖さのあるミステリーを読みたい」

そんな人におすすめしたい一冊です。


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