このミステリー、最後で全部壊れます|『medium 霊媒探偵城塚翡翠』感想(ネタバレなし)

本の紹介

「霊媒」という特殊能力を持つ城塚翡翠。
死者の声を手がかりに、事件の真相へと迫っていく物語です。

いわゆる“天才探偵”や“執念の刑事”などは出てきませんが、霊媒というオカルト的な能力により事件を解決していきます。
その異質さが、ミステリーにどんな影響を与えるのか、最後まで目が離せなくなります。


■あらすじ

推理作家である香月史郎は、大学の後輩に誘われ、一緒に霊能力者の事務所を訪れた。その事務所には若くて美しく、神秘的な雰囲気の女性いた。その女性が城塚翡翠であった。

翡翠は霊媒師であり、死者の念を自身に憑依させることで、亡くなった人の感情や感覚を読み取ることができた。
この力を使い、香月と翡翠は殺人事件に挑むことになる。

しかし、霊媒というものは完璧ではなかった。死者が亡くなった場所でないと力が発揮できない。それに、死者の声を聞いて犯人が特定できても、その言葉に証拠能力はなく、捕まえることができなかった。

死者の声から得た情報をいかにして根拠のある事実にするか。
香月は翡翠の霊媒で得た言葉をヒントに論理で補完しながら、共に事件の真相へと迫っていく。


■感想

霊媒という超能力的な技を使い犯人に迫っていく、アニメのような設定に感じるが、しっかりとミステリーとして成立している点がこの本の面白いところです。
「ファンタジー寄りなのかな?」と思いながら読み始めましたが、実際は論理と直感が組み合わさる独特の推理スタイルが魅力でした。

翡翠がヒントを出し、香月が論理で整理するという形で進んでいきますが、読者自身もヒントから一緒に考えながら読むことができます。
(私はほとんど当たりませんでしたが、それもまた楽しいです)

そして終盤。
この作品の最大の見どころでもある「どんでん返し」が待っています。
それまで積み重ねてきた物語が一気に反転し、「何を信じればいいのか分からなくなる感覚」と、「すべてが繋がる快感」が同時に押し寄せてきます。

本作のどんでん返しは、1つの言葉ですべてが変わる一撃必殺のどんでん返しではなく、感情を揺さぶる波が何度も来る波状攻撃型タイプです。
序盤からトリックが組み込まれており、まさに「すべてが伏線」という言葉がふさわしい構成でした。


■読みやすさについて

本作は4つの事件で構成されており、それぞれが一話完結。
短編集ほど軽くはないものの、1話分の区切りがはっきりしており、1話ごとに満足感があるため、読書に慣れていない人でも一息つくタイミングがあり、比較的読みやすい構成です。


■まとめ

正直に言うと、完全な読書初心者には少しボリュームを感じるかもしれません。
ただ、ある程度本に慣れている人やミステリーが好きな人であれば、本のボリューム以上の価値を感じ、ストーリーに引き込まれて一気に読める作品です。

この作品を読み始めたら、必ず最後まで読んでください。
この作品の魅力は、終盤に詰まっています。
読み終えたあと、きっと最初から読み返したくなるはずです。

ミステリー好きなら満足度はかなり高い一冊。
個人的にも、かなり上位に入るおすすめ作品です。

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