この問題に正解した者が、クイズチャンピオンになる。
誰もが息を呑む決勝の最終問題。静まり返る会場で、司会者が口を開く。
「問題――」
その瞬間、早押しボタンの音が鳴り響いた。
しかし、まだ問題は一文字も読まれていない。
誰もがミスだと思った、その一押し。だが次の瞬間、信じられないことが起きる。
正解音が鳴り響いた。
■あらすじ
クイズ番組「Q-1グランプリ」決勝戦。
優勝賞金1000万円、初代王者の座をかけて三島玲央と本庄絆がこの大舞台で白熱した戦いをしていた。
早押し形式の戦いは、3対3の同点のまま最終問題へ。そして迎えた運命の一問。
司会者が「問題」と言いかけた瞬間、本庄がボタンを押す。
まだ問題文は一文字も読まれていない。常識ではあり得ない「0文字押し」。
早すぎるボタン押しに誰もが敗北を確信する中、本庄は解答を口にする。
その答えは正解だった。
こうして決勝戦は幕を閉じるが、納得できない三島の中に疑念が残る。
「なぜ、問題も聞かずに正解できたのか?」
ヤラセなのか、それとも別の理由があるのか。
三島はこの不可解な出来事の真相を追い始める。
■感想
この作品の核は、とてもシンプルです。
「なぜ0文字押しで正解できたのか?」
物語は、このたった一つの謎を徹底的に掘り下げていきます。
読み始めたときは、クイズを次々に解いていくような展開を想像していました。
いわゆる“クイズを楽しむ小説”のイメージです。
しかし実際はその逆で、ひとつの現象を論理的に解き明かしていく検証型ミステリーでした。
物語の前半は、決勝戦の緊張感が丁寧に描かれています。
読んでいるとその場にいるような感覚になり、一気に引き込まれます。
目が離せない状態で「0文字押し」が起きた瞬間は衝撃的です。
後半は関係者への聞き取りを通じて、少しずつ真相に迫っていく展開になります。
本庄は勘で答えたのか?それとも問題文を知っていたのか?
最後には真相が明らかになりますが、派手などんでん返しではなく、
積み重ねによって真実に近づいていく構成です。
■読んで感じたこと
正直に言うと、私は最初に抱いていたイメージとのズレを感じました。
脱出ゲームのような「クイズを楽しむ物語」を期待していたため、
調査や聞き取りが中心の展開に少し物足りなさを感じてしまった部分もあります。
ただ、視点を変えるとこの作品は、クイズという題材を使った本格ミステリー的な構造になっています。
もし「0文字押し」が殺人事件だったとしたら、かなり王道の推理小説として成立するような緻密さがあります。
■こんな人におすすめ
・一つの謎をじっくり考えるのが好きな人
・派手さよりも論理的な積み重ねを楽しみたい人
・クイズの世界や思考プロセスに興味がある人
逆に、
・テンポよくクイズを解いていく展開を期待する人
・強いどんでん返しを求める人
には、少し合わないかもしれません。
■まとめ
本書は、問題を聞かずに答えることができるのかを徹底的に追いかけるミステリーです。
派手な展開はありませんが、その分、じわじわと真相に近づいていく面白さがあります。
読む前にイメージしていた内容とは違いましたが、発想と構造の面白さが印象に残る一冊でした。

