葉桜の季節に君を想うということは、読み終えたあとに“自分の認識そのもの”を疑いたくなるような、不思議な読書体験を与えてくれる作品です。
ただしその分、人を選ぶ一冊でもあると感じました。
■あらすじ
女好きで人情に厚い「なんでも屋」の成瀬将虎。
ある日、高校生の後輩・芹澤清から、「気になっている女性に会いに行くのを付き添ってほしい」と相談を受けます。
その女性・久高愛子に会うと亡くなったおじいちゃんの死に不審な点があると語り、将虎は調査に関わることになります。
一方で、借金に苦しむ古屋節子は、返済のためにある仕事を引き受けたことで、次第に危険な領域へと足を踏み入れていきます。
複数の人物の思惑が絡み合いながら、物語は少しずつ思わぬ方向へと進んでいきます。
■感想
読み始めてまず感じたのは、強い違和感でした。
というのも、物語は将虎のかなり奔放な女性関係からスタートします。
タイトルの綺麗な印象とはかけ離れた導入に、「本を間違えたかもしれない」と思ったほどです。
ただ、この違和感は無駄ではありませんでした。
将虎という人物像を理解したうえで物語を追うことで、彼の行動や人との関わり方に少しずつ納得感が生まれていきます。
人情味があり、困っている人を放っておけない。
そんな一面が見えてくるにつれて、最初に抱いた印象が少しずつ変わっていきました。
物語は中盤以降、過去の出来事や複数のエピソードが絡み合いながら進んでいきます。
ただ、その構成はやや複雑で、場面の切り替わりも多いため、流れを追うのに苦労する部分もありました。
正直なところ、読みながら内容を整理することに精一杯で、この作品の大きな特徴である“どんでん返し”については、期待されるほどの衝撃を感じることはできませんでした。
「やられた!」というよりは、「どういうことなんだ?」と戸惑いのほうが大きかった、というのが率直な感想です。
ただ、これは作品の評価というより、読み手との相性や読書経験による部分も大きいと思います。
物語にしっかり入り込み、細部まで意識して読める方であれば、より強い衝撃を受ける作品なのだと感じました。
■まとめ
本作は、読む人によって評価が大きく分かれる作品だと思います。
構成の複雑さや違和感の積み重ねを楽しめるかどうかで、印象は大きく変わります。
その分、はまったときの衝撃は非常に大きいはずです。
読書に慣れていて、物語の仕掛けや構成をじっくり楽しみたい方にはおすすめできる一冊です。
一方で、読みやすさや分かりやすさを重視する方には、少しハードルが高いかもしれません。
時間をおいて再読することで、また違った見え方がする作品だとも感じました。

