ミステリー初心者にも読みやすい話題作|『屍人荘の殺人』感想(ネタバレなし)

本の紹介

ミステリー小説にはさまざまな作品がありますが、『屍人荘の殺人』はその中でもかなり異色の作品です。

大学生たちがペンションで合宿を行うという、いかにも事件が起こりそうな舞台設定。そこに脅迫状や過去の自殺事件といった不穏な要素が加わり、物語は思いもよらない方向へ進んでいきます。

私も以前から気になっていた作品だったのですが、実際に読んでみると想像していた本格ミステリーとは少し違い、良い意味で予想を裏切られました。

本作は漫画化や映画化もされ、多くのミステリーファンから高い評価を受けている話題作です。

今回は、そんな『屍人荘の殺人』を読んだ感想をネタバレなしで紹介します。


■あらすじ

ミステリ愛好会の葉村譲は、愛好会会長の明智恭介と喫茶店にいた。

いつものように明智の推理論を聞いていると、突然ひとりの女性から声をかけられる。
「はじめまして。文学部の剣崎比留子といいます」
面識はないが、彼女はこちらのことを知っていた。

「映画研究部の合宿に同行してほしいんです」
剣崎自身は映画研究部ではないが、友人から合宿について相談を受けたらしい。
同行してほしい理由を尋ねると、先日この合宿に脅迫状が届いたという。
『今年の生贄は誰だ』
さらに、過去にはこの合宿で自殺者も出ていたらしい。

脅迫状の真相を調べるため、剣崎は明智のもとを訪れたのだった。
実は明智も以前、この合宿への参加を希望していた。しかし部外者であることを理由に断られていたという。
突然の誘いに興奮を抑えきれず、明智は葉村と剣崎とともに合宿への参加を決めた。

当日、3人は映画研究部のメンバーと合流し、合宿先となるペンションへ向かった。
到着したペンションは洋風の3階建てで、すでに部屋割りも決められていた。
ロビーに入ると、ひとりの男が待っていた。
「おせぇよ。こっちはずっと女の子待ってんだよ」

不躾な言葉に面食らっている間に、映画研究部部長の進藤が男に謝っていた。
そこへ別の男が仲裁に入り、どうやら彼らは大学のOBだと分かる。
ここで合宿の本当の目的が見えてきた。

どうやらこの合宿は名目上こそ映画研究部の合宿だが、実際はOBをもてなすための接待コンパだったのだ。
明智は何も知らず、「ペンション合宿」といういかにも事件が起こりそうな状況に惹かれて参加を希望したが、前回は男ひとりだったため断られていたらしい。
しかし今回は剣崎がいた。
剣崎は脅迫状や過去の自殺の真相を探るため、この内情を知ったうえで参加していたのだった。

広場でバーベキューが始まる。
参加者たちは楽しそうに会話をしているが、その裏ではOBたちが女子学生に声をかけていた。
事情を知らずに参加した女子学生たちに誘いを断られたことで、口の悪い男は徐々に不機嫌になっていく。

やがて日が暮れ、場の空気を変えるために合宿恒例の肝試しが行われることになった。
「15分ほど歩いた先にある神社のお札を取って戻る。」
ルールが決まり、男女でペアを組むことになった。
その場には口の悪い男の姿がない。誘いを断られたことで腹を立て、どこかへ行ってしまったらしい。

気にすることなく肝試しは始まる。
くじ引きでペアになった葉村と剣崎も、何組かが出発した後に歩き始めた。
明かりのない雑木林を抜け、山道へ出たところで遠くから悲鳴が聞こえてくる。

「うわあああああ!」
肝試しとは思えないほど恐ろしい悲鳴だった。
目を凝らすと、3人の人影が山を下ってくる。
何かがおかしい。
人影はうめき声を上げながら、こちらへ向かっていた。

そして山の反対側を振り返った時、異様な光景が目に飛び込んできた。
山の奥に見える県道に、無数の人影が広がっていたのだ。

夜なのに遠くの山の空が明るく見える。
この日は、その先で大規模なロックフェスが開催されていた。


■感想

漫画や映画にもなっている『屍人荘の殺人』は、おすすめのミステリー小説として名前が挙がることも多く、聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

本作は大学生の合宿という身近な舞台から、ある出来事をきっかけに一気に異常事態へと変化していきます。
物語は葉村譲の視点で進みますが、実際に謎を解き明かしていくのは明智恭介です。
行き過ぎたミステリーオタクともいえる明智が、独創的な推理で事件の真相に迫っていく姿には自然と引き込まれました。

作中には難しい表現も少なく、大学生たちの軽快な会話を中心に物語が進みます。
そのため内容を理解しやすく、登場人物の感情も伝わりやすい印象でした。
特に明智恭介というキャラクターは魅力的で、読書初心者の方でも楽しく読み進められると思います。

一方で、少し気になった点もありました。
作中では大きく分けて二つの事件が起こるのですが、そのうち一方のインパクトが非常に強いため、もう一方の印象が薄くなってしまったように感じます。
そして、その印象の薄くなってしまった事件こそが本作のミステリーとしての中心部分でした。

読み終えた時には「すべて解決したのだろうか」と少し戸惑いが残り、個人的にはやや消化不良な印象もありました。
もちろん、このあたりはネタバレになってしまうため詳しくは書けません。
ただ、大学生たちの身の周りで起きる事件の方に注目して読むと、本格ミステリーとして十分楽しめる作品だと思います。

トリックは本格ミステリーらしく作り込まれており、それを探偵役の明智恭介が一つひとつ解き明かしていきます。
これからミステリー小説を読んでみたい方には、入門作品としておすすめできる一冊です。
反対に、本格ミステリーを数多く読んでいる方にとっては、やや物足りなく感じる部分もあるかもしれません。


■まとめ

個人的には気になる部分もありましたが、それでも「なぜこの作品が多くの人におすすめされているのか」はよく分かりました。

物語の展開は非常にインパクトがあり、続きが気になってページをめくる手が止まりません。

ミステリー初心者の方はもちろん、普段あまり本を読まない方でも楽しみやすい作品だと思います。

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