「人類で最初に人を殺したのは誰なのか?」
そんなことを考えたことはあるでしょうか。
現代では当たり前のように存在する犯罪ですが、その始まりには必ず「最初の一件」があったはずです。
上田未来さんの『人類最初の殺人』は、殺人や詐欺、盗聴といった犯罪の起源をテーマにした異色のミステリー短編集です。
約20万年前の原始時代を舞台にした「人類最初の殺人」をはじめ、それぞれの犯罪がどのように生まれたのかを独自の視点で描いています。
今回は、本書のあらすじと感想をネタバレなしでご紹介します。
■あらすじ
「皆さんは、『バードマン』をご存じでしょうか?」
FMラジオの新番組が始まった。
第1回のテーマは「人類最初の殺人」。
ナビゲーターに紹介された専門家が、歴史上最古の殺人について語り始める。
1984年、イギリスの考古学者が約20万年前の人類の化石を発見した。
その化石は男性のもので、頭蓋骨には陥没した筋状の傷跡が残されていた。
考古学者は法医学チームに鑑定を依頼する。
やがて鑑定結果が出た。
「死因は撲殺」
男性は棍棒のようなもので正面から殴られており、腕には頭をかばった際にできたとみられる傷も見つかった。
さらに法医学チームはCGを使って男性の姿を復元し、傷の方向や強度から死亡時の状況を再現した。
その結果、男性は争いの中で命を落としたのではなく、顔見知りによる正面からの一撃によって殺害された可能性が高いことが判明する。
これが「人類最初の殺人」の証拠だった。
そして、この化石の周囲からは遺体を覆うかのように大量の大型鳥類の羽毛の化石が発見された。
このことから、男性は「バードマン」と呼ばれるようになる。
はたしてバードマンは何者だったのか。 そして、彼を殺したのは誰なのか。
専門家が人類最初の殺人の真相を語り始める。
■感想
どんなものにも必ず起源があります。
本書では、「殺人」をはじめとするさまざまな犯罪の起源が描かれています。
言われてみれば、人類で最初に殺人を犯した人物はどのような人だったのか、気になるところです。
物語では、人類最初の殺人事件は約20万年前に起きたという設定になっています。
20万年前といえば、ホモ・サピエンスがアフリカに現れた頃です。
文明もなく、その日を生き延びることが何より重要だったであろう時代に、どのような理由で人は人を殺したのか。
そんな原始時代の出来事に強く興味を引かれました。
本書では「殺人」以外にも、詐欺や盗聴など複数の犯罪の起源が描かれています。
犯罪ごとに舞台となる時代や場所が異なり、加害者と被害者それぞれにドラマがあります。
「なるほど、こういう形で始まったのか」と納得できるエピソードが多く、興味深く読むことができました。
物語は、ラジオ番組に出演した専門家が事件の真相を語る形式で進みます。
専門家による導入のあと、当時の出来事が物語として描かれる構成です。
そのため、ミステリーとしての謎解き要素はそれほど強くなく、事件解説を聞いているような感覚で楽しめました。
本書は5つの犯罪を扱った短編集です。
それぞれが独立した物語となっており、1話ごとにコンパクトにまとまっています。
文章もわかりやすく、内容も理解しやすいため、読書初心者でも無理なく読むことができるでしょう。
一方で、読書に慣れている方や本格ミステリーを好む方には、やや物足りなく感じるかもしれません。
しかし、気軽に読めて内容も理解しやすいため、読書習慣をつけたい方やミステリー初心者の入門書としておすすめできる一冊です。
■まとめ
『人類最初の殺人』は、「もし人類最初の殺人事件があったとしたら?」という大胆な発想から始まる、ユニークなミステリー短編集です。
殺人だけでなく、詐欺や盗聴などさまざまな犯罪の起源が描かれており、それぞれの物語に人間らしいドラマが詰まっています。
本格ミステリーのような複雑な謎解きを楽しむ作品ではありませんが、「犯罪の始まり」をテーマにした独特の視点は非常に興味深く、最後まで飽きずに読むことができました。
短編集なので読みやすく、文章もわかりやすいため、読書初心者の方にもおすすめです。
「少し変わったミステリーを読んでみたい」 「気軽に読める作品を探している」
そんな方は、ぜひ手に取ってみてください。

