「ちょっと変わったミステリーを読んでみたい」
「難しいことを考えず、笑いながら読める小説が読みたい」
そんな人におすすめしたいのが、藤崎翔さんの『お梅は呪いたい』です。
タイトルからすると、なんだか怖そうな作品に思えるかもしれません。
しかし、この作品はホラーというよりも、笑いながら楽しく読めるコメディミステリー。
主人公は、なんと五百年前に作られた日本人形です。
その名も「お梅」。
長い眠りから目覚めたお梅は、現代の日本で「呪い」を実行しようとします。
ところが、なぜか思い通りにいきません。
お梅が呪おうとすればするほど、事態はどんどんおかしな方向へ。
果たして、お梅は無事に人間を呪うことができるのでしょうか?
今回は、そんな藤崎翔さんの『お梅は呪いたい』を紹介します。
■あらすじ
五百年前に作られた日本人形「お梅」。
戦国時代、多くの死者の怨念を吸収し、大名一族を呪い殺してきたお梅が、長い年月を経て現代の日本で目を覚まします。
しかし、そこにはお梅が知っている世界とはまったく違う世界が広がっていました。
人々の暮らしも、街の様子も、使われている道具も、何もかもが変わっています。
そんな現代で、お梅は自分の使命ともいえる「人間を呪うこと」を実行しようとします。
ところが、お梅が呪おうとするたびに、なぜか予想外の出来事が起こってしまいます。
お梅は一人の持ち主のもとに留まり続けるわけではありません。
さまざまな人の手に渡っていくことで、それぞれの持ち主を中心とした物語が展開されていきます。
果たして、お梅の「呪い」は成功するのか。
そして、お梅をめぐる物語は最後にどこへたどり着くのでしょうか?
■感想
・五百年後の世界を見たお梅の驚きが面白い
この作品を読んでまず面白いと思ったのが、五百年前の日本人形であるお梅から見た現代社会です。
お梅にとっては、ほんの少し眠っていただけの感覚なのかもしれません。
ところが、目を覚ましてみると、そこにはまったく知らない世界が広がっています。
昔と現代では、人々の生活も考え方も大きく変わっています。
そんな世界に突然放り込まれたお梅の姿を見ていると、
「もし自分が数百年後の未来にタイムスリップしたら、こんな感じなのかな?」
と思ってしまいました。
そう考えているうちに、ふと浦島太郎のことも思い出しました。
もし浦島太郎が玉手箱を開けず、そのまま未来の世界で暮らしていたら……。
もしかすると、お梅と同じように「何もかも変わっている!」と驚いていたのかもしれません。
そんな想像をしながら読むのも楽しい作品です。
・呪いたいのに、なぜかうまくいかない!
お梅には「人間を呪いたい」という強い思いがあります。
ところが、お梅が頑張って呪おうとすればするほど、なぜか事態はおかしな方向へ進んでいきます。
「いや、そうじゃない!」
と思わずツッコミを入れたくなるような展開が次々と起こります。
そして、そんなお梅の姿を見ていると、逆に現代人の強さがわかってきます。
五百年前なら恐ろしい存在だったはずのお梅が、現代人にはなかなか通用しません。
お梅にとっては必死なのに、読者からすると面白い。
このギャップが、この作品の大きな魅力だと思います。
・持ち主が変わるたびに物語も変わっていく
お梅は、さまざまな人の手に渡っていきます。
そのため、持ち主が変わるたびに新しい物語が始まります。
それぞれの登場人物が抱えている事情も違うため、まるで短編集を読んでいるような感覚で楽しむことができます。
一つひとつのエピソードが独立しているように読めるので、テンポもよく、次々と読み進めることができました。
「次はお梅がどんな人のところへ行くんだろう?」
と気になってしまい、自然とページをめくる手が止まらなくなります。
しかし、この作品のすごいところは、それだけではありません。
バラバラに見えていた物語が、最後には少しずつつながっていきます。
そして、その先には感動が待っています。
序盤から中盤までは笑いながら読んでいたのに、クライマックスでは心に響く展開が待っています。
私は実際に涙が出てしまいました。
笑える作品だからこそ、最後の感動がより強く感じられます。
・笑って読んでいたら、いつの間にか止まらなくなる
『お梅は呪いたい』は、難しい謎をじっくり考えるタイプのミステリーではありません。
むしろ、コメディのようなストーリーを気軽に楽しめる作品です。
お梅が必死になればなるほど、なぜかおかしな方向へ進んでしまう。
その展開に笑いながら読んでいるうちに、
「次はどうなるんだろう?」
と気になってしまいます。
気が付けば、どんどん読み進めてしまう。
そんな読みやすさが、この作品の魅力だと思います。
ミステリー感は薄めの作品ですので、ミステリーをあまり読まない人でも、肩の力を抜いて楽しめる作品です。
・こんな人におすすめ
『お梅は呪いたい』は、こんな人におすすめです。
笑いながら読めるミステリーが好きな人
オカルト感のある小説が好きな人
緩めのミステリーを読んでみたい人
最後に感動できる小説を読みたい人
特に、「ミステリーは難しそう」と感じている読書初心者にもおすすめしたい作品です。
■まとめ
藤崎翔さんの『お梅は呪いたい』は、五百年前の日本人形が現代社会で「人間を呪う」という、ちょっと変わった設定の作品です。
五百年前から現代へやってきたお梅が、まったく違う世界に驚く姿は面白く、
「自分が未来にタイムスリップしたら、こんな感じなのかな?」
と想像しながら楽しむことができます。
そして、お梅が呪おうとすればするほど、なぜか事態はおかしな方向へ。
笑いながら読み進めていくうちに、気が付けば物語に引き込まれていきます。
さまざまな持ち主のもとを渡り歩くため、短編集のように楽しめるのも魅力です。
それぞれの物語を楽しんでいると、最後にはすべてがつながっていきます。
そして待っているのは、思わず涙が出てしまうような感動的な展開。
「笑える小説だと思って読んでいたら、最後に泣かされた」
そんな読書体験ができる一冊でした。
怖いタイトルからは想像できない、笑えて、楽しくて、最後には心を動かされる物語です。
ちょっと変わったミステリーを読みたい人は、ぜひ手に取ってみてください。
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