「全員が殺人犯!?異色の本格ミステリー|『密室殺人ゲーム王手飛車取り』感想(ネタバレなし)」

本の紹介

「なぜ事件は起きたのか?」
ミステリー小説ではおなじみのテーマですが、本書は少し違います。

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』に登場するのは、事件を解決する探偵ではなく、実際に人を殺した犯人たち。
彼らはインターネット上に集まり、自らの犯行をクイズとして出題し合います。

「どうやって殺したのか」 「どんなトリックを使ったのか」
参加者たちは互いの犯行を推理し、その巧妙さを競い合うのです。

全員が殺人犯という異色の設定ながら、本格ミステリーとしても高い完成度を誇る本作。

今回は、歌野晶午さんの『密室殺人ゲーム王手飛車取り』のあらすじと感想を、ネタバレを控えながらご紹介します。


■あらすじ

インターネット上に集まる5人。彼らはカメラ越しに会話を楽しんでいる。
画面にはそれぞれの姿が映っているものの、顔は隠されており表情はわからない。さらにボイスチェンジャーで声まで変えていた。

彼らはあるクイズゲームをしていた。
誰かが出題者となって問題を出し、他のメンバーが答える。1つの問題が終わると出題者が交代し、次の問題が出される。

全員が出題者であり解答者でもある。そのクイズの内容は、普通の人なら思いつかないような異質なものだった。
問題はすべて殺人事件に関するもの。誰が最初にトリックを見破るか、真相へたどり着けるかを競うのだ。

「探偵ごっこをしよう」
その言葉をきっかけに集まった5人。この5人が用意した問題の難易度は非常に高かった。
一度で正解することはほとんどできない。
現場の状況や関係者の行動など、少しずつヒントが明かされ、そのたびに解答者たちは推理を進めていく。

そして、このゲームには特別なルールがあった。
それは、出題する内容は実際に自分が行った殺人でなければならないということ。
この場にいるメンバーは全員が殺人犯であり、しかもまだ捕まっていない。

いかにして完全犯罪を成し遂げたのか。それが出題内容だった。
さらに、出題者の順番が回ってくるたびに新たな問題を用意してくる。

殺人鬼たちによる狂気のクイズゲーム。
彼らの犯行手口を見破ることはできるのだろうか。


■感想

本書は、殺人事件の真相を推理していく本格ミステリーです。

タイトルに『王手飛車取り』とありますが、将棋を題材にした作品ではありません。将棋の話は一切出てこないので、タイトルに惑わされないよう注意してください。
物語の中心となるのは次々に出題される殺人事件の謎です。

本作の最大の特徴は、登場人物たちが全員殺人犯だということです。
普通のミステリーであれば、探偵が事件を調査し、犯人を追い詰めていきます。しかし本書には探偵も警察もほとんど登場しません。物語の中心にいるのは、実際に人を殺した犯人たちです。

彼らはインターネット上に集まり、自分が行った殺人をクイズとして出題します。
そして他の参加者たちは、そのトリックや犯行方法を推理していきます。

画面越しに酒を飲みながら、自分の犯行を武勇伝のように語る姿は非常に異様です。
普通なら恐ろしいはずの殺人が、彼らにとってはゲームの題材になっています。
「どうやって殺したのか」 「どんなトリックを使ったのか」 「他の参加者に見破られないか」
彼らの関心はそこにしかありません。
その狂気じみた価値観が、本作ならではの独特な雰囲気を生み出しています。

また、本書は読者自身も推理に参加できる作品です。
事件の概要が説明され、少しずつヒントが明かされていくため、登場人物たちと一緒に真相を考えることができます。
しかし、出題者は常識から逸脱した思考回路を持つ殺人犯ばかりなので、簡単に答えへたどり着くことはできません。

どの事件もよく考えられており、「そんな方法があったのか」と驚かされる場面が何度もありました。
一つの事件が終わるごとに次の出題者へ交代するため、短編を連続して読んでいるような感覚で楽しめるのも魅力です。
長編作品ですが区切りがはっきりしているため、少しずつ読み進めやすい構成になっています。

一方で、読書初心者には少しハードルが高い作品かもしれません。
文庫版でも500ページを超えるボリュームがあり、人によっては読み切るまで時間がかかると思います。
また、トリックも複雑なものが多く、気軽に読めるミステリーというよりは、本格的な謎解きをじっくり楽しむ作品です。

そのため、「犯人当てを楽しみたい」「難しいトリックに挑戦したい」という人には非常におすすめできます。
一方で、普段あまり本を読まない方は、まず読みやすいミステリーを何冊か読んでから挑戦すると、本作の面白さをより味わえるでしょう。

狂気に満ちた殺人犯たちの会話と、本格ミステリーならではの巧妙なトリックが楽しめる異色の一冊でした。
普通のミステリーとはひと味違う作品を読みたい方には、ぜひおすすめしたい作品です。


■まとめ

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』は、殺人犯たちが自らの犯行をクイズとして出題し合うという、非常に独創的な設定の本格ミステリーです。

登場人物たちの価値観は常識から大きく外れており、その異様なやり取りには不気味さを感じる一方で、続きが気になってページをめくる手が止まらなくなります。

また、読者も登場人物たちと同じ立場で推理を楽しめるため、本格ミステリーが好きな方には特におすすめです。
巧妙なトリックや意外な真相に、何度も驚かされることでしょう。

一方で、ボリュームがあり内容もやや複雑なため、読書初心者には少し難しく感じるかもしれません。
しかし、「普通のミステリーでは物足りない」「一味違う作品を読んでみたい」という方には、挑戦する価値のある一冊です。

狂気の殺人ゲームと本格推理が融合した異色作。気になった方は、ぜひ一度手に取ってみてください。​


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