昔話の世界で起こる殺人事件!青柳碧人の昔話シリーズ最終作|『むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。』感想(ネタバレなし)

本の紹介

「こぶとりじいさん」「耳なし芳一」「舌切り雀」「三年寝太郎」「金太郎」
誰もが一度は聞いたことのある日本昔話です。
しかし、もし昔話の世界で殺人事件が起こっていたとしたら?

青柳碧人さんの『むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。』は、そんな発想から生まれた「昔話×本格ミステリ」シリーズの第3弾です。

今回登場するのは、
「こぶとりじいさん」「耳なし芳一」「舌切り雀」「三年寝太郎」「金太郎」
といった、昔から親しまれてきた物語。

ただし、私たちが知っている昔話が、そのまま描かれるわけではありません。
昔話の設定を大胆にアレンジし、そこに殺人事件や謎解きを組み合わせることで、まったく新しいミステリーへと生まれ変わっています。

「この昔話から、どうやってミステリーを作るの?」
そんな疑問を抱きながら読み始めると、予想もしなかった物語が待っています。
日本昔話と本格ミステリーを組み合わせた「むかしむかし」シリーズ。

今回は『むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。』をネタバレなしで紹介します。


■あらすじ

本作は、日本昔話を題材にした5つの物語からなる連作短編集です。

最初に登場するのは「こぶとりじいさん」。
右の頬にこぶを持つ、正直者の芋作じいさん。
ある日、山で道に迷った芋作じいさんは、雨乞い堂で夜を過ごすことになります。
そこで出会ったのは、酒を飲みながら楽しそうに踊る赤鬼と青鬼。
芋作じいさんは鬼たちと一緒に踊ることになり、思わぬ出来事が起こります。
しかし、その後、村では殺人事件が発生。
昔話として知られている「こぶとりじいさん」の物語が、ミステリーへと変わっていきます。

続く「陰陽師、耳なし芳一に出会う。」では、「耳なし芳一」の世界に陰陽師が登場。
平家の亡霊がさまよう世界で、殺人容疑をかけられた人物をめぐる事件が描かれます。
「女か、雀か、虎か」では、「舌切り雀」を題材に、魔性の女と死体をめぐる謎が展開。
「三年安楽椅子太郎」では、「三年寝太郎」と「笠地蔵」を組み合わせたような、不思議な事件が起こります。
そして最後を飾るのが「金太郎城殺人事件」。
金太郎の物語をベースに、謎解き合戦が繰り広げられます。

どの物語にも、昔話の設定を知っているからこそ楽しめる仕掛けが用意されています。
誰もが知っている昔話が、いったいどんなミステリーに生まれ変わっているのでしょうか?


■感想

本作を読んでまず驚かされるのは、題材となっている昔話です。

シリーズ第1作や第2作では、桃太郎や浦島太郎、かぐや姫など、比較的よく知られている昔話が登場しました。
しかし今回は、「こぶとりじいさん」や「耳なし芳一」などが中心。
もちろん誰もが知っている昔話ですが、桃太郎や浦島太郎ほど頻繁に語られる物語ではありません。

だからこそ、「この話ってどんな内容だったかな?」と思いながら読んでいるうちに、本作の物語が元ネタだったのではないかと錯覚してしまうような感覚があります。
知っている昔話なのに、まったく違う新しい物語を読んでいるようなところが、「むかしむかし」シリーズの面白さだと思います。

昔話には、現実ではありえない出来事がたくさん登場します。
鬼が人間のこぶを取ったり、亡霊が現れたり、動物が人間のように話したり。
子どものころは、「昔話だから、そういうもの」と、何も疑問に思わず読んでいたはずです。
ところが、本作では、そんな昔話の「不思議」をミステリーの材料として利用しています。

「本当にそんなことが起こったのか?」
「なぜ、そんな出来事が起こったのか?」
と考えながら読むことで、昔話がまったく違って見えてきます。
ファンタジーとして読んでいた物語を、今度はミステリーとして読み直す。
この発想がとても面白いです。

個人的に興味を引かれるのが、最初の「こぶとり奇譚」です。
昔話の「こぶとりじいさん」では、鬼にこぶを取ってもらった正直なじいさんを見て、欲張りなじいさんも同じことをしようとします。
本作もそこまでは、おなじみの昔話を思わせる展開です。
ところが、その後に殺人事件が起こります。
「こぶとりじいさん」と殺人事件がどうつながるのか。
こうした「昔話の続きをミステリーとして描く」ような構成は、本作ならではの魅力です。

「陰陽師、耳なし芳一に出会う。」も、かなり面白い組み合わせです。
「耳なし芳一」といえば、平家の亡霊に取り憑かれた琵琶法師の物語。
そこに陰陽師という、怪異を扱う存在を組み合わせています。
普通ならホラーになりそうな設定ですが、そこに殺人事件や謎解きが加わります。
昔話の世界観を残しながら、別の要素を組み込み、ミステリーとして事件を追っていく。
このジャンルを自由に組み合わせる発想は、青柳碧人さんならではだと感じます。

本作は5つの物語で構成された短編集です。
そのため、一つの長い事件を何百ページも追い続けるタイプのミステリーではありません。
一話ごとに違った昔話が題材になるので、
「次はどんな昔話がミステリーになるんだろう?」
と楽しみながら読み進められます。

また、題材になっているのが昔話なので、物語の世界にも入りやすいと思います。
普段あまりミステリーを読まない人でも、昔話を読むような感覚で読み始められるのが魅力です。

本作は「むかしむかし」シリーズの第3弾です。
ただ、一話完結の内容なので前作とはストーリーにつながりがなく、本作を最初に読んでもまったく問題ありません。
シリーズ全体でどの作品から読んでも楽しめるので、誰もが知っているメジャーな話から読んでも、あまり知らない昔話を知るために読んでも大丈夫です。

桃太郎や浦島太郎のような有名な昔話だけではなく、こぶとりじいさんや耳なし芳一など、題材を変えながら新しい謎を作り出していく。
これまでシリーズを読んできた人ならもちろん、初めて読む人でも一冊の短編集として楽しめる作品だと思います。

特に読書初心者にとっては、知っている話なのでイメージしやすく、一話が短い短編集なので読みやすいのが魅力です。
さらに、異なるストーリーをいくつも楽しめるので、ミステリーの入門書としてもおすすめしたい一冊です。


■まとめ

『むかしむかしあるところに、死体があってもめでたしめでたし。』は、日本昔話と本格ミステリーを組み合わせた「むかしむかしあるところに」シリーズの第3弾です。

今回の題材は、
「こぶとりじいさん」「耳なし芳一」「舌切り雀」「三年寝太郎」「金太郎」
という、昔から親しまれてきた物語。

しかし、本作では昔話をそのまま再現するのではなく、その世界に殺人事件や謎解きを組み込んでいます。

誰もが知っている昔話を大胆にアレンジしているのが、本作の魅力です。
昔話を知っているからこそ、
「この物語が、こんなミステリーになるのか!」
という驚きを楽しめます。

また、5つの短編で構成されているので読みやすく、ミステリー初心者にもおすすめです。
「昔話が好き」
「普通のミステリーとは少し違った作品を読みたい」
「短編で気軽にミステリーを楽しみたい」
そんな人には、ぜひ読んでほしい一冊です。

子どものころに聞いた昔話を、今度はミステリーという視点から読み直してみる。
そうすると、今まで気づかなかった「昔話の裏側」が見えてくるかもしれません。


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