「もしも赤ずきんが、アラビアンナイトの世界に迷い込んだら?」
そんな童話好きにはたまらない設定で人気を集めている、青柳碧人さんの「赤ずきんシリーズ」。
『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』『赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。』に続く第3弾では、赤ずきんが今度は「アラビアンナイト」の世界へと足を踏み入れます。
待っていたのは、アラジン、アリババ、シンドバッドといったおなじみの登場人物たち。
さらに、空飛ぶじゅうたんやランプの魔人など、アラビアンナイトならではの不思議なアイテムまで登場します。
「魔法が存在する世界で、どうやって殺人事件を解決するの?」
童話と本格ミステリーが組み合わさった、ちょっと変わった謎解きを楽しめる一冊です。
今回は、そんな『赤ずきん、アラビアンナイトで死体と出会う。』を、ネタバレなしで紹介します。
■あらすじ
ザザーン朝ペルシャの王・シャハリアールは、かつて妻に裏切られたことから、女性を信用できなくなっていました。
その結果、若い女性と結婚しては、翌朝には殺してしまうという恐ろしい行為を繰り返していました。
そして、町で最後の若い女性として王のもとに現れたのが、宰相の娘・シェヘラザードでした。
シャハリアールはシェヘラザードの前に立ち、「言い残すことはないか」と告げます。
するとシェヘラザードは、自分が殺される前に、王へある物語を聞かせます。
それは、「赤ずきん」という少女の物語でした。
こうして始まるのが、アラビアンナイトの世界で繰り広げられる赤ずきんの冒険です。
今回の赤ずきんは、「アラジンと魔法のアリバイ」「アリババと首吊り盗賊」「シンドバッドと三つ子の事件」など、誰もが一度は聞いたことのある物語の世界で起こる事件に巻き込まれていきます。
しかし、今回の舞台には魔法が存在します。
空を飛ぶじゅうたんやランプの魔人など、現実ではありえないものが普通に登場する世界です。
そんな世界で起こる殺人事件を、赤ずきんはどのように推理していくのでしょうか?
童話の世界だからこそ成立する謎とトリックを前に、赤ずきんの名推理が始まります。
■感想
「赤ずきんシリーズ」の面白さは、誰もが知っている童話の世界を舞台にして、本格的なミステリーを作り上げているところです。
赤ずきんシリーズ第3弾となる本作では、これまでとは一味違い、舞台がアラビアンナイトの世界へと移ります。
アラジン、アリババ、シンドバッドなど、子どものころに聞いたことがある物語が次々と登場します。
そこに赤ずきんという別の物語の主人公が加わることで、有名人とのコラボ企画を観ているようなワクワク感があります。
「この世界に赤ずきんがいるのが面白い」という、独特の世界観が生まれています。
しかも、単純に有名な物語を再現しているだけではありません。
アラビアンナイトの設定を利用しながら、そこに殺人事件と謎解きを組み合わせています。
童話を知っているほど楽しめる部分もありますが、元ネタを詳しく知らなくても物語そのものは楽しめるので、ミステリー初心者でも読みやすい作品です。
本作で特に面白いと感じたのが、「魔法が存在する世界で、どうやって事件を解決するのか」というところです。
普通のミステリーなら、
「犯人はどうやって現場に侵入したのか?」
「どうやってアリバイを作ったのか?」
といった、現実世界のルールを前提にして考えます。
しかし、この作品には魔法があります。
空飛ぶじゅうたんがあったり、ランプの魔人が登場したりと、現実ではありえないことが普通に起こる世界です。
そのため、
「もしかして魔法を使ったのでは?」
と思ってしまいます。
ところが、そこからさらに謎解きが始まります。
ファンタジーだから何でもありなのではなく、アラビアンナイトの世界観を利用しながら、きちんとミステリーとして事件を解決していく。
このバランスが、本作の大きな魅力だと思います。
もちろん、今回も赤ずきんが探偵役として大活躍します。
事件が起こると、赤ずきんは登場人物たちの証言や現場の状況を冷静に確認し、少しずつ事件の謎を解き明かしていきます。
童話の世界を舞台にしているため、事件そのものはかなりユニーク。
それでも、赤ずきんの推理には「なるほど」と思わせる説得力があります。
そして、事件の謎が明らかになったときの爽快感も、このシリーズならでは。
「そういうことだったのか!」
と、それまでの出来事がつながっていく感覚を楽しめます。
コミカルな雰囲気の作品ですが、ミステリーとしてもしっかり楽しめるところが魅力です。
本作は、1冊の長編小説というより、複数の事件を楽しめる連作短編集になっています。
そのため、長い物語を読むのが苦手な人でも比較的読み進めやすい作品です。
また、アラビアンナイトという有名な物語をベースにしているため、世界観にも入りやすいと思います。
「本格ミステリーを読んでみたいけれど、難しそう……」
という人にも、こうした遊び心のあるミステリーはおすすめです。
童話や昔話が好きな人なら、さらに楽しめるでしょう。
シリーズ作品ですが、1話ごとに事件は完結しますので、本書から読み始めても問題ありません。
ただし、赤ずきんのキャラクターや過去作とのつながりをより楽しみたいなら、前作まで読んでから本作に進むのがおすすめです。
■まとめ
『赤ずきん、アラビアンナイトで死体と出会う。』は、童話とミステリーを組み合わせた「赤ずきんシリーズ」の第3作です。
今回は舞台をアラビアンナイトの世界へ移し、アラジン、アリババ、シンドバッドなど、おなじみの物語を題材にした事件が描かれています。
空飛ぶじゅうたんやランプの魔人など、魔法が存在する世界で起こる殺人事件を、赤ずきんが推理していく展開は、本作ならではの面白さです。
「童話やファンタジーが好き」
「気軽に読めるミステリーを探している」
「本格ミステリーは少し難しそう」
そんな人には、ぜひおすすめしたい一冊です。
童話の世界で起こる殺人事件を、赤ずきんはどうやって解決するのか?
気になる方は、ぜひ赤ずきんと一緒にアラビアンナイトの世界を旅してみてください。
■『赤ずきん』シリーズの紹介記事はこちら

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