「小説を読んでみたいけれど、難しそう……」
そんな人におすすめしたいのが、藤崎翔さんの『オリエンド鈍行殺人事件』です。
タイトルを見ると、本格的な殺人事件を扱ったミステリー小説を想像するかもしれません。
実際、表題作ではローカル線「オリエンド鈍行」で殺人事件が発生し、乗客たちが犯人探しを始めます。
しかし、本作はそれだけではありません。
5つの短編と5つのショートショートが収録されており、ミステリーだけでなく、SF、ファンタジー、ホラー、恋愛など、さまざまなジャンルの物語を楽しむことができます。
さらに、藤崎翔さんらしい独特な感性がたっぷり入っています。
どの作品も少し変わった視点で描かれていて、堅苦しい小説とは少し違った楽しみ方ができる一冊です。
今回は、そんな『オリエンド鈍行殺人事件』を、ネタバレなしで紹介していきます。
■あらすじ
【オリエンド鈍行殺人事件】
北関東の山合いを走るローカル線。折田駅と遠藤駅を結ぶ、通称「オリエンド鈍行」。
ある日、大雨によって土砂崩れが起き、この列車が緊急停止します。
車掌は緊急事態のため救助を要請しようと、大雨の中、車外へ出ていきます。車内には8名の乗客が残されました。
そんな中、ずっと寝ている男性の荷物が落ちたため、声をかけます。
しかし、その男性はすでに死んでいたのです。
突然、殺人事件に巻き込まれることになった7人の乗客たちは、当然のように犯人探しを始めます。
ところが、乗客は全員一般人。事件を鮮やかに解決してくれる名探偵はいません。
手がかりを探し、犯人を推理しようとするものの、なぜか解決していくのは殺人事件とは関係のない問題ばかり。
推理をするたびに話が逸れていき、物語は予想外の方向へ進んでいきます。
こんな状況で事件は解決するのでしょうか?
表題作のほかにも、「SF」「ファンタジー」「恋愛」「サスペンス」など、バラエティ豊かな短編・ショートショートが収録されています。
■感想
タイトルだけ見ると、アガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』を連想させますが、内容は一切関係ありません。
『オリエント急行殺人事件』を読んだことがある人も、まだ読んでいない人も、何も気にせずに別作品として楽しんでください。
本書には5つの短編作品と5つのショートショートが収録されていて、「オリエンド鈍行殺人事件」はその中の1作品です。
収録されているほかの作品は、SF、ファンタジー、ホラー、恋愛、ユーモアなど、さまざまなジャンルを詰め込んだ短編集になっています。
そのため、タイトルからミステリー作品だと思って読むと、「あれ?思っていたよりミステリーが少ない?」と感じる可能性があります。
しっかりとしたミステリー小説を期待している人には、少し物足りなく感じてしまうと思います。
しかし、まだ多くの小説を読んでいない初心者にとっては、この1冊でいろいろなジャンルに触れることができます。
もしかすると、ミステリー以外にも「こんなジャンルが好きだったんだ」と、自分の好みのジャンルを見つけられるかもしれません。
短編集ということもあり、一つひとつの物語がコンパクトにまとめられています。
長編ミステリーのように、登場人物や設定を覚えながらじっくり読み進める必要がないので、「今日は少しだけ本を読みたい」というときにも手に取りやすい作品です。
小説を読み始めたばかりの人にも、挑戦しやすい一冊だと思います。
藤崎翔さんの作品といえば、ユーモアのある文章と予想外の展開が魅力のひとつです。
本作でも、その魅力が存分に発揮されています。
「オリエンド鈍行殺人事件」は、通常のミステリーなら登場するはずの名探偵がいないという、変わった切り口になっています。
読んでいるとクスッと笑ってしまう場面もあり、「殺人事件なのに、こんなに笑っていいの?」と思ってしまうような、独特の雰囲気があります。
「犯人は誰なんだろう?」と考えながら読むだけではなく、「この状況、いったいどうやって収拾するんだ?」という、別の意味でのワクワク感も楽しめます。
ほかの作品も、独特な展開が描かれています。
中でも『ファーブル昆虫記を読んで』という作品では、小説家が子どもに作文を書くコツをアドバイスする場面があります。
このアドバイスは、ブログを書いている私にも参考になるような、「なるほど」と思える内容でした。
ほかの物語では、人を救うために過去に戻るものの、思っていた展開とは違う方向へ進んでいったり、ゲームキャラクターのオフの行動が描かれたり、ストーカー目線で恋愛が語られたりします。
藤崎翔さんのユーモアあふれる独特な感性によって物語が進み、それぞれ異なるテーマや雰囲気でありながら、笑える要素が含まれています。
一冊の中で、いろいろなタイプの物語を楽しめるのも本作の魅力です。
短編なので展開が早く、「このあと、どうなるんだろう?」と思っているうちに物語が進んでいきます。
そして、最後まで読んでみると、「そういうことだったのか!」と思わされる作品もあります。
長編小説とは違い、短い時間で一つの物語を楽しめるので、読書初心者にもおすすめしやすい作品です。
本作は文庫で約270ページと比較的コンパクトで、しかも10編の短編・ショートショートに分かれています。
そのため、「一気に一冊読み切らないといけない」というプレッシャーがありません。
1作品ずつ区切って読むことができるので、普段あまり本を読まない人でも読みやすいと思います。
また、堅苦しい内容ではなく、ユーモアや意外な展開も楽しめるため、「ミステリーを読むのは難しそう」という人だけでなく、「小説自体が難しそう」と思っている人にも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
■まとめ
『オリエンド鈍行殺人事件』は、ミステリーだけではなく、SF、ファンタジー、ホラー、恋愛など、さまざまなジャンルを楽しめる短編集です。
表題作では、名探偵がいない状況で乗客たちが殺人事件の謎に挑むという、少し変わったミステリーが楽しめます。
そして、藤崎翔さんらしいユーモアや予想外の展開も本作の魅力です。
一方で、タイトルから本格的なミステリーを期待して読むと、「思っていたよりミステリー作品が少ない」と感じるかもしれません。
ミステリー以外のジャンルで短編やショートショートが構成されているため、一つひとつの作品を気軽に読むことができます。
「長編小説はちょっと苦手」
「いろいろなジャンルの小説を読んでみたい」
「まずは読みやすい作品から小説に挑戦したい」
そんな人には、特におすすめしたい一冊です。
ミステリーだけにこだわらず、気軽にいろいろな物語を楽しみたい人は、ぜひ『オリエンド鈍行殺人事件』を読んでみてください。
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