ミステリー小説といえば、個性的なキャラクターです。
独特の思考回路を持つ名探偵、屈折した心の闇を抱える犯罪者、推理をかき乱す愉快な仲間たち。 普段の生活の中でこんな人がいたら、きっと手を焼くことでしょう。
しかし、ミステリー小説では、この個性的なキャラクターたちの突拍子もない行動が物語をより面白くし、読者に強い印象を与えてくれます。
今回は、実際に私が読んだ作品の中から、印象的なキャラクターが登場するミステリー小説を紹介します。
ネタバレはありませんので、次に読む一冊を探している方はぜひ参考にしてください。
まずは初心者におすすめしたい個性的なキャラクターが登場するミステリー小説を3冊紹介します。
・殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス 著:五条紀夫
【おすすめ理由】
単純で感情のまま行動する、自称「正義の人」メロス。知性のかけらもない無茶苦茶な行動がツッコミどころ満載で、思わず笑ってしまうミステリーです。
・赤ずきん、旅の途中で死体と出会う 著:青柳碧人
【おすすめ理由】
鋭い洞察力と推理力を持つ、強気で少し毒舌な赤ずきん。童話の心優しい赤ずきんとのギャップが大きな魅力です。
・謎解きはディナーのあとで 著:東川篤哉
【おすすめ理由】
お嬢様と執事の関係なのに、なぜか立場が逆転している。2人の絶妙な関係と掛け合いにクスッと笑える本格ミステリー。
■今回紹介する作品の選定基準
読書初心者の私が実際に読んだ作品の中から、印象に残るキャラクターが登場する小説を選びました。
特に、主人公や探偵役など物語の中心となるキャラクターが個性的な作品を10冊紹介しています。
なお、キャラクターの特徴を紹介するとネタバレにつながってしまう作品は除外しました。
なるべく読書初心者でも読みやすい作品を選んでいますが、ボリュームがあったり内容が少し難しかったりする作品もあります。
初心者へのおすすめ度を★で表していますので、参考にしてください。
紹介する作品に順位はありません。気になった作品からぜひ読んでみてください。
【おすすめ10選】
■殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス 著:五条紀夫
初心者おすすめ度:★★★★★
【こんな人におすすめ】
・理屈よりパワープレイが好きな人
・笑える小説を探している人
・これから読書を始めたい人
【キャラクターの特徴】
とにかく真っ直ぐな心を持つメロス。真っ直ぐすぎるあまり、見聞きしたことをそのまま受け止め、自分の信じる道を突き進みます。
自称「正義の人」であり、曲がったことが大嫌い。たとえ王様が相手でも臆することなく突っかかり、何でも力で解決しようとします。
被害を受けるのは、いつもメロスの周りの人たち。突拍子もない発言や行動に振り回されながらも、周囲の人々はみんな心優しく、メロスを信じて協力してくれます。
そんな仲間たちに支えられながら、メロスは独自のやり方で事件解決へ挑んでいきます。
【詳しい感想はこちら】
読書初心者にもおすすめ!笑えるミステリー|『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』感想(ネタバレなし)
■赤ずきん、旅の途中で死体と出会う 著:青柳碧人
初心者おすすめ度:★★★★★
【こんな人におすすめ】
・童話のような世界観が好きな人
・ファンタジー要素のあるミステリーを読みたい人
・小説を読み慣れていない人
【キャラクターの特徴】
本作の主人公は、おなじみの赤ずきんです。
ただし、童話に登場する無邪気でか弱い少女ではありません。 強気で物怖じせず、ときには毒舌も飛び出す、切れ者の名探偵として描かれています。
旅の途中で次々と事件に巻き込まれますが、持ち前の鋭い洞察力と推理力で、わずかな違和感から真相へとたどり着いていきます。
周りの大人たちは赤ずきんを子ども扱いしますが、その先入観を鮮やかに覆し、誰も気づかなかった矛盾を指摘して犯人を追い詰める姿は爽快です。
童話で親しまれている赤ずきんとのギャップも本作の大きな魅力で、「こんな赤ずきんがいたのか」と思わず引き込まれてしまいます。
さらに、『シンデレラ』や『ヘンゼルとグレーテル』など、おなじみの童話の登場人物たちも個性的に描かれており、童話の世界を知っているほど楽しめる作品です。
【詳しい感想はこちら】
童話の世界で殺人事件!?|『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』感想(ネタバレなし)
■謎解きはディナーのあとで 著:東川篤哉
初心者おすすめ度:★★★★★
【こんな人におすすめ】
・笑いながら読めるミステリーを探している人 ・短編集で気軽に楽しみたい人 ・小説を読み慣れていない人
【キャラクターの特徴】
本作の魅力は、大富豪のお嬢様で新人刑事の宝生麗子と、毒舌執事・影山の軽快な掛け合いです。
麗子は刑事として事件の捜査にあたりますが、事件の真相にあと一歩届かず、毎回頭を悩ませます。一方で、屋敷に戻るとお嬢様らしい一面を見せ、影山に事件の相談を持ちかけます。
そんな麗子に対し、影山は話を聞いただけで事件の真相を見抜いてしまうほどの鋭い推理力を持っています。しかし、素直に答えを教えることはなく、
「お嬢様の目は節穴でございますか?」
という痛烈な一言で麗子をたしなめながら、少しずつ真相へ導いていきます。
麗子は毎回その毒舌に腹を立てながらも、影山とのやり取りを通して事件を解決していきます。
名探偵と助手という王道の組み合わせとはひと味違い、毒舌執事とお嬢様刑事という絶妙なコンビだからこそ生まれるテンポの良い掛け合いが、本作最大の魅力です。
【詳しい感想はこちら】
笑えて楽しめるミステリー入門書|『謎解きはディナーのあとで』感想(ネタバレなし)
■容疑者Xの献身 著:東野圭吾
初心者おすすめ度:★★★★★
【こんな人におすすめ】
・ミステリーの名作を読んでみたい人
・心を動かされる物語を求めている人
・どんでん返しで衝撃を受けたい人
【キャラクターの特徴】
東野圭吾の「ガリレオシリーズ」を代表する名作です。
主人公の「ガリレオ」こと物理学者・湯川学は、卓越した論理的思考力で事件の真相を解き明かしていきます。
誰も見落としてしまうような小さな証拠や証言、人の何気ないしぐさから犯人の行動やトリックを見抜いていく姿は、まさに天才そのものです。
そんな湯川の前に立ちはだかるのが、大学時代の同級生でもある数学教師・石神。
石神は無口で目立たない人物ですが、湯川に匹敵するほどの頭脳を持ち、数手先まで見据えた緻密な計画を立てることができます。
論理と論理がぶつかり合う二人の頭脳戦は、本作最大の見どころです。
読み終えたあとも、湯川と石神の対決が強く印象に残る一冊です。
【詳しい感想はこちら】
最後に“すべての意味が変わる”——『容疑者Xの献身』が傑作である理由(ネタバレなし)
■地雷グリコ 著:青崎有吾
初心者おすすめ度:★★★★★
【こんな人におすすめ】
・平和なミステリーを探している人
・ゲーム性のある展開が好きな人
・頭脳戦や心理戦を楽しみたい人
【キャラクターの特徴】
主人公の射守矢真兎(いもりや・まと)は、大きめのカーディガンを羽織り、どこかマイペースな雰囲気をまとった女子高生です。
勉強よりも「自分が楽しめること」を優先する、ごく普通の高校生に見えます。しかし、ひとたび勝負が始まると、その印象は大きく変わります。
普段は何も考えていないように見えて、ゲームのルールを細かく分析し、相手の心理まで読み切ったうえで最適な戦略を組み立てていきます。
冷静な観察力と柔軟な発想で、誰も思いつかない作戦を次々と生み出し、実力者たちを鮮やかに打ち破っていく姿は爽快です。
一見すると普通の女子高生なのに、勝負になると圧倒的な才能を発揮する――そのギャップこそが、射守矢真兎というキャラクター最大の魅力です。
【詳しい感想はこちら】
子どもの遊びが極限の頭脳戦に変わる!|『地雷グリコ』感想(ネタバレなし)
■ファラオの密室 著:白川尚史
初心者おすすめ度:★★★★☆
【こんな人におすすめ】
・一風変わった設定のミステリーを読みたい人
・古代エジプトや考古学に興味がある人
・神話の世界観が好きな人
【キャラクターの特徴】
本作の主人公は、なんとミイラです。
舞台は古代エジプト。死者はいずれ復活すると信じられていた時代、神官だったセティは何者かに命を奪われ、女神マアトの力によって一時的によみがえります。
復活したセティに与えられた使命は、自らの死の真相を解き明かすこと。
セティは決して派手な天才ではありません。
冷静な判断力と誠実な人柄を武器に、わずかな手がかりを一つひとつ積み重ねながら真実へ近づいていきます。
限られた時間の中で、自分を殺した犯人を追い、古代エジプトならではの文化や信仰に秘められた謎へ挑んでいく姿は、思わず応援したくなる魅力があります。
「殺された本人が、自分の死の真相を調べる」という斬新な設定も、本作ならではの大きな見どころです。
【詳しい感想はこちら】
ミイラが事件を解く!?古代エジプトが舞台の『ファラオの密室』感想【ネタバレなし】
■medium 霊媒探偵城塚翡翠 著:相沢沙呼
初心者おすすめ度:★★★★☆
【こんな人におすすめ】
・オカルト要素のあるミステリーが好きな人
・予想を覆す展開を楽しみたい人
・魅力的な女性主人公が活躍する作品を読みたい人
【キャラクターの特徴】
城塚翡翠は、透き通るような美しさと儚げな雰囲気を持つ霊媒師です。
無邪気で子どものような一面があり、人を疑うことをあまりしない純粋な性格のため、危険な状況にもためらいなく飛び込んでしまいます。その姿に、「思わず守ってあげたくなる」と感じる読者も多いでしょう。
しかし、その可憐な印象とは裏腹に、事件に向き合うと驚くほど鋭い洞察力を発揮します。
霊媒能力によって被害者の最期の状況を知ることができますが、それだけで事件を解決するわけではありません。現場の状況や人間心理を冷静に分析し、小さな違和感を見逃さずに真実へとたどり着いていきます。
可憐さと知性、そして神秘的な雰囲気をあわせ持つ城塚翡翠は、ほかの探偵にはない唯一無二の魅力を持った主人公です。
※本作は、キャラクターの魅力そのものが物語の大きな見どころでもあります。ネタバレを避けるため、詳しくはぜひ本編で確かめてみてください。
【詳しい感想はこちら】
このミステリー、最後で全部壊れます|『medium 霊媒探偵城塚翡翠』感想(ネタバレなし)
■体育館の殺人 著:青崎有吾
初心者おすすめ度:★★★★☆
【こんな人におすすめ】
・学園ミステリーが好きな人
・読みながら推理を楽しみたい人
・個性的な名探偵が活躍する作品を読みたい人
【キャラクターの特徴】
本作の探偵役・裏染天馬(うらぞめ・てんま)は、常識にとらわれない非常に個性的な人物です。
学校に住み着き、アニメやゲームに囲まれて生活する重度のオタク。興味のないことにはまったくやる気を見せず、周囲からは「ダメ人間」と思われています。
しかし、その一方で頭脳は飛び抜けて優秀。
事件が起こると、散らばった証拠や証言を冷静に整理し、一つひとつ論理を積み重ねながら真相を導き出していきます。
普段のだらしない姿からは想像もできないほど鋭い推理を披露するため、そのギャップが裏染最大の魅力です。
天才探偵というと近寄りがたい人物を思い浮かべるかもしれませんが、裏染はどこか人間味があり、親しみやすさも感じさせます。
アニメやゲームを愛するオタクでありながら、事件になると誰も反論できないほどの論理を展開する──その落差が強く印象に残る主人公です。
【詳しい感想はこちら】
変人天才高校生が難事件に挑む本格学園ミステリー|『体育館の殺人』感想(ネタバレなし)
■アリス殺し 著:小林泰三
初心者おすすめ度:★★★☆☆
【こんな人におすすめ】
・一風変わったミステリーを読みたい人
・ファンタジー要素のある作品が好きな人
・不思議な世界観に浸りたい人
【キャラクターの特徴】
本作には、常識では考えられない思考や価値観を持つキャラクターが数多く登場します。
物語は現実世界と夢の世界、二つの舞台で進みます。主人公の亜理は、現実では課題や将来に悩む普通の女子大生ですが、夢の世界では「アリス」として奇妙な住人たちと出会います。
夢の世界には、トカゲのビル、三月兎、帽子屋、ハートの女王など、『不思議の国のアリス』でおなじみのキャラクターたちが登場します。
しかし、彼らは単に個性的なだけではありません。同じ言葉を話しているはずなのに、言葉の意味や物事の捉え方が根本から異なっているため、会話がまったく噛み合わないのです。
「そんな発想になるの?」と思わず驚いてしまうような言動の連続に、主人公だけでなく読者まで振り回されます。
不気味さとユーモアが同居した独特の世界観は、小林泰三作品ならではの魅力です。常識が通用しない登場人物たちだからこそ、この作品でしか味わえない読書体験を楽しめます。
【詳しい感想はこちら】
意味が通じない会話に混乱する異質ミステリー|『アリス殺し』感想(ネタバレなし)
■密室殺人ゲーム王手飛車取り 著:歌野晶午
初心者おすすめ度:★★★☆☆
【こんな人におすすめ】
・犯人目線のミステリーを読んでみたい人
・頭脳戦や心理戦を楽しみたい人
・一風変わった設定のミステリーが好きな人
【キャラクターの特徴】
本作に登場するのは、インターネット上に集まる5人の人物。彼らは推理ゲームの参加者であると同時に、全員が実際に殺人を犯した犯罪者です。
しかし、彼らは自分たちの罪を悔いることはありません。それよりも、「いかに巧妙なトリックを作るか」「どうすれば相手を出し抜けるか」というゲームそのものに強い執着を見せます。
一般的なミステリーでは、探偵が犯人を追い詰めます。しかし本作では、犯人同士が互いの犯罪を題材に知恵比べを繰り広げるという、非常に異色の設定になっています。
5人はそれぞれ得意分野や考え方が異なり、トリックの組み立て方や推理の進め方にも個性があります。そのため、誰がどのような発想でゲームに挑むのかを見るだけでも楽しめます。
倫理観の欠けた危険な人物ばかりですが、だからこそ生まれる緊張感やスリリングな駆け引きは、本作ならではの魅力です。
探偵でも被害者でもない、「犯人」という立場だからこそ描ける異色のキャラクターたちが、強烈な印象を残してくれる一冊です。
【詳しい感想はこちら】
全員が殺人犯!?異色の本格ミステリー|『密室殺人ゲーム王手飛車取り』感想(ネタバレなし)
■まとめ
ミステリー小説の魅力は、巧妙なトリックや意外な結末だけではありません。
物語を最後まで夢中で読ませてくれるのは、個性あふれるキャラクターたちの存在です。
天才的な推理力を持つ探偵、常識では考えられない発想をする主人公、思わず笑ってしまうユニークな人物など、登場人物が魅力的だからこそ、その作品は読後も記憶に残ります。
今回紹介した10冊は、それぞれ異なる個性を持つ主人公や探偵が活躍する作品ばかりです。
「笑えるミステリーが読みたい」「天才同士の頭脳戦を楽しみたい」「普通とは違う主人公に出会いたい」など、自分の好みに合いそうな一冊からぜひ手に取ってみてください。
お気に入りのキャラクターに出会えれば、その作品だけでなく、シリーズ作品や同じ作家の本も読みたくなるはずです。
あなたにとって忘れられない主人公や名探偵との出会いが、この中から見つかればうれしいです。

