ミステリー小説の中には、「日本のどこかで本当に起きた事件なのでは?」と思ってしまうほど、現実味のある作品があります。
派手なトリックや非現実的な設定ではなく、日常生活の延長線上で起こりそうな事件や、人間の心理を丁寧に描いている作品は、読んでいるうちに他人事とは思えなくなります。
ニュースを見ているようなリアルさがあり、気づけばページをめくる手が止まらない。そんな作品も少なくありません。
今回は、私が実際に読んだ作品の中から、「現実でも起こりそう」と感じたミステリー小説を10冊紹介します。
ネタバレはありませんので、「リアリティのあるミステリーを読みたい」「身近に感じられる作品が好き」という方は、ぜひ参考にしてください。
■今回紹介する作品の選定基準
今回紹介するのは、私が読んだ作品の中でも、特に現実味を感じたミステリー小説です。
ファンタジー要素や非現実的な設定の作品は除き、日常生活の中で起こりそうな事件や、人間心理をリアルに描いた作品を中心に選びました。
読書初心者でも読みやすい作品を多く選んでいますが、中には少しボリュームのある本や、本格ミステリー寄りの作品も含まれています。
初心者へのおすすめ度を★で表していますので、本選びの参考にしてください。
なお、紹介する作品に順位はありません。気になった作品からぜひ読んでみてください。
【おすすめ10選】
■イニシエーション・ラブ 著:乾くるみ
初心者おすすめ度:★★★★★
【こんな人におすすめ】
・恋愛小説も楽しみたい人
・最後に驚かされる作品を読みたい人
・伏線回収が見事なミステリーを味わいたい人
【どんなところが日常的?】
『イニシエーション・ラブ』は、大学生の恋愛を描いた青春小説のような雰囲気で進んでいきます。
どこにでもいそうな男女の恋物語。特殊な事件に巻き込まれるわけではなく、特異な人物が出てくるわけでもなく、ごくごく普通の恋愛事情が描かれています。
読者のなかには、同じような経験をしたことがある人や、似たような感情を抱いたことがある人もいるのではないでしょうか。
最後には話が一変するどんでん返しがありますが、それも含めて身近に感じられる作品でした。
【詳しい感想はこちら】
恋愛小説だと思って読むと危険な一冊『イニシエーション・ラブ』感想(ネタバレなし)
■六人の嘘つきな大学生 著︰ 朝倉秋成
おすすめ度︰★★★★☆
【こんな人におすすめ】
・就職活動で苦労した経験がある人
・人の裏の顔を見てみたい人
・刺激的なミステリーが苦手な人
【どんなところが日常的?】
就職活動中の大学生たちが企業に振り回され、そして自分たちの暗い過去が暴かれてしまうといった内容です。
ほとんどの人は就職活動や企業試験、アルバイトの面接など働くためにその会社の選考を受けたことがあるのではないでしょうか?
相手に自分を選んでもらうため、様々な努力や苦労をした人も多いのではないでしょうか。
物語は、大企業の最終選考に挑む大学生の話ですが、自分の人生をかけて努力する姿に、自然と応援してしまいます。
【詳しい感想はこちら】
誰を信じる?告発文が突きつける疑いの連鎖|『六人の嘘つきな大学生』感想(ネタバレなし)
■君のクイズ 著︰ 小川哲
おすすめ度︰★★★★☆
【こんな人におすすめ】
・クイズ番組をよく見る人
・殺人や犯罪の話に抵抗がある人
・謎解きの流れを知りたい人
【どんなところが日常的?】
テレビで放送されたクイズ大会。ラスト1問でおきたあり得ない解答。
物語はクイズ番組が舞台となっていますので、普段テレビで見ている番組と情景を重ねることができ、話の内容がイメージしやすいです。
テレビやYouTubeなどで、出演者の人柄や番組制作の裏側を知る機会も増えました。今ではテレビ業界はブラックボックス的な謎が多い業界ではなくなりました。
こんな今の時代だからこそ、クイズ番組の参加者や出演者、制作スタッフの行動や感情がわかり、「実際にどこかで起きていても不思議ではない」と思えるほど、リアリティのある作品でした。
【詳しい感想はこちら】
なぜ「0文字押し」で正解できたのか?|『君のクイズ』感想(ネタバレなし)
■アヒルと鴨のコインロッカー 著:伊坂幸太郎
初心者おすすめ度:★★★★☆
【こんな人におすすめ】
・伏線回収が見事な作品を読みたい人
・切ない読後感のミステリーが好きな人
・伊坂幸太郎作品を初めて読む人
【どんなところが日常的?】
アパートの隣人・河崎の不思議な人生を描いた作品です。過去と現在の奇妙な出来事を読み進めていくうちに登場人物たちの関係が徐々につながっていきます。
若者とのトラブルや交通事故など、誰の身にも起こり得る出来事が積み重なり、登場人物たちの人生は大きく変わっていきます。
誰の身にも起こりそうな出来事ばかりで、「自分もこうなってしまうかも」と思えるぐらい身近に感じてしまいます。
実際に起きたことと言われれば、信じてしまうぐらいリアリティのある作品でした。
【詳しい感想はこちら】
最後にすべてがつながる切ないミステリー|『アヒルと鴨のコインロッカー』感想(ネタバレなし)
■沈黙のパレード 著:東野圭吾
初心者おすすめ度:★★★☆☆
【こんな人におすすめ】
・人の心理に興味がある人
・リアリティのある作品を求めている人
・推理の過程が知りたい人
【どんなところが日常的?】
ある商店街で起きた殺人事件。物理学者の湯川が事件の謎解きに挑むが、誰からも有効な証言が得られない。まるで街ぐるみで話を合わせているよう。
「自分もこの商店街の人だったら、同じことをするかもしれない」と思ってしまうほど、人の心理を突いてくる作品です。
もし身近な人が事件の被害者になったら、自分ならどう行動するだろうか。そんなことを考えずにはいられません。
小説だからと割り切れず、まるで身近で起きた事件のように物語へ引き込まれてしまいます。
【詳しい感想はこちら】
全員が沈黙する理由とは?ガリレオシリーズ屈指の傑作ミステリー|『沈黙のパレード』感想(ネタバレなし)
■葉桜の季節に君を想うということ 著:歌野晶午
初心者おすすめ度:★★★☆☆
【こんな人におすすめ】
・先入観を覆されるミステリーを読みたい人
・伏線回収が見事な作品を楽しみたい人
・読後にもう一度読み返したくなる作品を探している人
【どんなところが日常的?】
主人公は、困っている人を放っておけない元探偵。人の相談を受けているうちに、自分自身も事件に関わっていくことになってしまいます。
悪徳商法や詐欺グループ。身近にはびこる悪に対し、被害者の感情や詐欺の手口など、世の中の闇の部分が語られていきます。
自分が知らないだけで、世の中ではこんなことが起きているのだろうと思えてきます。
恋愛要素もあり、好きな人を想って行動したり葛藤したり、人間味のある物語になっています。
ラストは賛否が分かれるかもしれませんが、それも含めて強く印象に残る作品でした。
【詳しい感想はこちら】
この小説、理解できないまま終わる人も多いです|『葉桜の季節に君を想うということ』感想(ネタバレなし)
■ルビンの壺が割れた 著:宿野かほる
初心者おすすめ度:★★★★★
【こんな人におすすめ】
・短時間で読める作品を探している人
・衝撃的なラストを味わいたい人
・心の内面に興味がある人
【どんなところが日常的?】
物語は男女のSNSでのやり取りだけで進んでいきます。
「SNS上で女性の名前を見つけ、ご連絡しました。」といった男性からのメールから始まり、2人の思い出話のような過去の出来事が語られていきます。
最初のうちは「お久しぶりです。」といったことでお互いの現況などを報告し合い、徐々に「昔はこんなことがありましたね。」といった思い出話やその時の感情の話に変わっていきます。
SNS上のごく普通のやり取り。今では誰もが使用するメールやSNSのやり取りがリアルで、同じことがどこかで起きているだろうと考えてしまいます。
【詳しい感想はこちら】
自分には合わない本だと思っていたのに、最後の1行で震えた話|『ルビンの壺が割れた』感想(ネタバレなし)
■推しの殺人 著:遠藤かたる
初心者おすすめ度:★★★★☆
【こんな人におすすめ】
・アイドルの私生活に興味がある人
・殺人者側のストーリーが読みたい人
・女性が奮闘するストーリーが読みたい人
【どんなところが日常的?】
主人公は地下アイドルとして活動する3人の少女です。
華やかな道を選び、人気を得るために容姿や特技を磨く。そして利益のために仲間を蹴落とす。
アイドルという特殊な職業を選んだ彼女たちですが、舞台を降りるとどこにでもいそうな女の子です。
自分が一番、自分が良ければというところがありますが、仕事や恋、人間関係といった誰もが持つ悩みを抱えています。
アイドルならではの葛藤や人間関係が丁寧に描かれており、物語の中で成長していく彼女たちの姿に、読者も自然と感情移入してしまいます。
【詳しい感想はこちら】
秘密を抱えたアイドルたちの青春ミステリー|『推しの殺人』感想(ネタバレなし)
■元彼の遺言状 著:新川帆立
初心者おすすめ度:★★★★☆
【こんな人におすすめ】
・圧倒的な存在感を出す主人公が見たい人
・お金に絡むミステリーが読みたい人
・大富豪の闇を知りたい人
【どんなところが日常的?】
敏腕弁護士・剣持麗子が大富豪の遺産を勝ち取るため、持ち前の頭脳と行動力とプライドでグイグイと道を切り開いていくストーリーです。
主人公は特殊な人物ですが、ストーリーは、誰にとっても無関係ではない「遺産相続」をテーマにした作品です。
大富豪だからというわけではなく、どの家庭でも起きる可能性がある問題を追及していく内容になっています。
ふとした瞬間、「明日は我が身かも」と自分に置き換えて考えてしまうところがあります。
【詳しい感想はこちら】
「犯人に全財産を譲る」衝撃の遺言から始まるミステリー|『元彼の遺言状』感想(ネタバレなし)
■火車 著:宮部みゆき
初心者おすすめ度:★★★☆☆
【こんな人におすすめ】
・社会派ミステリーに興味がある人
・人の心理を知りたい人
・深く重いテーマの作品を読みたい人
【どんなところが日常的?】
多重債務やカード破産といった、人に言えない社会の闇を突いた作品です。
借金地獄に陥った人が、思いもよらない行動を取る。なぜそんなことをしたのか。
自分は大丈夫と思っていても、お金のトラブルに巻き込まれてしまったときは、どうなってしまうのだろうかと考えさせられます。
あることが切っ掛けで失踪してしまった人を探すといったストーリーですが、何も情報がない中で聞き込みや現地調査などから手がかりを見つけていくことは、実際の警察や探偵も、このような地道な捜査をしているのではないかと思えるほどリアリティがあります。
【詳しい感想はこちら】
読書初心者には少し難しい?名作を正直レビュー|『火車』感想(ネタバレなし)
■まとめ
現実味のあるミステリーは、「もしかしたら本当に起きるかもしれない」という感覚があるからこそ、物語に深く引き込まれます。
派手なトリックだけではなく、人間心理や社会問題、身近な出来事を描いた作品は、読み終えた後も強く印象に残るでしょう。
気になる作品があれば、ぜひ手に取ってみてください。現実とフィクションの境界があいまいになるような、リアルなミステリーの世界を楽しめるはずです。

